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社説

インド・カシミール問題 自治権の剥奪は即撤回を

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 インドのモディ政権が北部ジャム・カシミール州の自治権を強引に剥奪した。現地の混乱だけでなく、同地の領有権を主張するパキスタンとの対立にも拍車がかかっている。

     自治はインドとパキスタンの分離独立後、約70年間続いていた。インドで少数派のイスラム教徒が約6割を占める地域の特殊性に配慮し、住民に一定の自決権を認める措置だった。外交や防衛など一部の権限を除き、州の独自性は保たれてきた。

     ところが、モディ政権は唐突に「テロを排除し開発を進める」との理由で、大統領令を出し、自治権を定めた憲法を国会で改正させた。今後、中央政府が直接統治に乗り出す。

     あまりにも強引な手法ではないか。政権は決定に相前後して現地に兵士を大量動員し、政治家を含む地元反対派を大勢拘束した。デモを防ぐために通信も遮断した。「世界最大の民主主義国」を自負する国のやり方とは思えない。

     今回の決定により、住民以外に認められていなかった不動産の取得が州外のインド人にも可能になる。地元の住民が恐れるのは、ヒンズー教徒が大挙して移住し、イスラム教徒が優勢な人口構成が変わることだ。

     モディ氏と与党・インド人民党(BJP)は、インドがヒンズー教徒の国だという思想である「ヒンズー至上主義」を掲げ、カシミールの統合も悲願だった。だが、4~5月の総選挙に圧勝したからといって、住民との対話なしに現状を力ずくで変更するのは無謀だ。

     パキスタンは反発し、駐インド大使を召還し貿易を停止した。パキスタンはカシミールの帰属を、国連安保理決議に基づく住民投票で決めるべきだと主張している。同地方の一部を実効支配している中国も反発し、国際的な問題に広がっている。

     インドとパキスタンは2月、カシミールを巡り互いに空爆し、軍事的緊張に陥った。双方とも核兵器保有国であり、周囲の不安は増した。

     今後、パキスタンとの対立が激化することが心配だ。また、インド国内ではヒンズー教徒とイスラム教徒の亀裂が深まっており、憎悪による犯罪やテロが懸念される。

     自治権の剥奪は地域情勢を不安定にさせるだけだ。モディ政権は決定を即時、撤回すべきだろう。

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