本人の困りごとを探求する当事者研究は個人の体験に基づいているが、そこから導き出された仮説を、他の学術分野と協働した実証実験で検証することにも取り組んでいる。
例えば、自閉スペクトラム症(ASD)の当事者がよく指摘する、対人的な距離感の違い。前回紹介した当事者の綾屋紗月さんは、幼稚園のころから「周りと自分の間に透明な分厚いガラスの板がある」と感じていたという。一方で、友だちが駆け寄ってきて「遊ぼう」と言うと、ガラスの板が消え、猛烈な光と音、情報の刺激が入ってくる。「他人」の進入を不快に感じる「パーソナルスペース」が他の人とは違うのではないかという仮説を立て、検証した。
用いたのは、検査者が徐々に近づいた時に、不快だと感じた距離で合図をしてもらう心理学で用いられる「ストップ・ディスタンス法」。「視線を合わせているかいないか」「相手が近づいてくるのか、自分が近づいていくのか」など状況設定を変えて実験したが、ASDの子どもはそうでない子どもに比べ、いずれもパーソナルスペースが狭かった。
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