連載
戦争や災害、差別など悲しみの記憶を持つ土地を巡り、現地で近現代社会について考える旅「ダークツーリズム」が全国的に知られつつある。戦争体験者が高齢化するなど直接の証言者が減る中、記録や遺構など、もの言わぬ痕跡からどうすれば教訓を得ることができるのか。
/中 湧別・機雷殉難の塔 戦意高揚、一転大惨事に ミスで誤爆、死傷者224人 /北海道
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

オホーツク海沿岸に位置し、道内最大の湖・サロマ湖を抱える湧別町。町の中心部からサロマ湖畔に向かう道道を走り、看板の案内を頼りに砂利道を浜辺まで進むと、牧草が生い茂る中に、石造りの慰霊塔がひっそりとたたずんでいた。
塔には「不測の爆発により一瞬にして多くの尊い人命を失った。この犠牲者の鎮魂と平和の尊さを後世に伝えるため、爆発より50年にあたり建立」とある。人為的なミスで機雷を誤爆させ、死者112人、負傷者112人を出した1942年5月26日の「湧別機雷爆破事故」の慰霊塔だ。
塔から車で約10分の町の中心部にある同町郷土館に行くと、事故の概要が分かる。説明によると、サロマ湖岸とオホーツク海岸に国籍不明の2本の機雷が漂着。太平洋戦争の開戦直後だった当時、地元警察は敵国の機雷と決めつけ「爆破は戦意高揚の絶好の機会」として、機雷の爆破処理の様子を公開することに決めた。
この記事は有料記事です。
残り1269文字(全文1654文字)