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文学に陰あり

丸谷才一「笹まくら」 隠岐で花見の徴兵忌避者 /島根

 笹枕(ささまくら)とは、旅先で寝ること。草がカサカサ鳴る音が不安な感じ。小説、評論、翻訳で活躍した丸谷才一(1925~2012年)の出世作が、長編小説「笹まくら」(1966年)である。

 この作品には二つの時間の川が流れている。一本は平和な昭和40年ごろ。浜田庄吉は45歳で、東京の私立大学の庶務課に勤めるサラリーマンだ。冒頭の一文は<香奠(こうでん)はどれくらいがいいだろう?>。かつて恋人だった阿貴子の訃報が届いたところ。有能な課長補佐である浜田の周辺では、課長の昇格人事を巡ってさざ波が立ち始めた。

 もう一本の川は戦争の時代だ。昭和15年秋から20年夏の敗戦までの5年間、若き浜田は徴兵から逃亡して…

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