ピンク地マイメロディ柄のきらきらしたキャリーバッグを足もとに置き、顔の下はんぶんを黒マスクで覆っていたりもするから、いまどきのひとなのかな、という印象もないではない。が、おたがいに自己紹介もはじめましてのひとことも口にしあっていないので、それ以上の人柄はつかめない。
つかめないといえば、そもそもこの招かれざる客たる男女の間柄がよくわからない。一緒に東京までやってきた同伴者どうしであるという割には、ふたりそろって少しもそんなそぶりを示さないためだ。会話はおろかアイコンタクトひとつかわす気配すらなく、どういう関係なのかといぶからずにはいられない。
そのことが、ずっと気になってはいるものの、かといって、事情を聞いてしまったらあともどりできない状況に追いこまれそうだ。だからそっちに話を振るのもためらわれると思い、横口健二は用心している。
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