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モリシの熊本通信

ストーリーであの日の記憶伝える /佐賀

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 熊本県では現在、熊本地震の教訓などを伝えるミュージアムの整備が進んでいる。地震の記憶をいかにして後世に伝えていくか。報道量が減り、私たち県民自身も地震の爪痕を目にする機会が格段に少なくなった今、大きな課題であると感じる。

     県が昨年3月に発表した基本計画によると、ミュージアムは「熊本地震の経験や教訓を学び、風化させず確実に後世に伝承する」「今後の大規模自然災害に向けた防災対応の強化を図る」などを基本コンセプトとして設定。形態は「回廊形式」にするという。県防災センター(熊本市)と東海大学阿蘇キャンパス(南阿蘇村)を中核拠点として整備。広範囲にわたる断層帯に沿って点在する震災遺構などを巡るイメージだ。震災遺構としては、崩落した阿蘇大橋近辺、益城町の断層、テクノ仮設団地などが列挙されている。

     回廊形式は、震災遺構が広域に点在することを逆手に取ったもので、個人的に素晴らしいアイデアだと思う。県全体で建物やインフラの復旧はしっかりと進めつつ、地震の記憶を伝える震災遺構をピンポイントで巡ることは、復興を進める上でも理にかなっている。

    他方、拠点施設における展示方法や伝え方については工夫が求められるとも感じる。皆が震災遺構を巡ることは現実的ではなく、拠点施設だけでも十二分に伝わるような展示が必要だからだ。

     そのヒントを、先月訪れた米国ニューヨークのマンハッタンで得た。訪問したのは、2001年9月11日の米同時多発テロで崩壊した世界貿易センタービルの跡地にある「9/11メモリアルミュージアム」。テロ発生当時の記憶を伝えるための施設だ。

     ミュージアムの中に入ると、ぐにゃりと曲がったビルの骨組みや、ビルの破片が直撃した消防車など、テロの凄惨(せいさん)さを伝える「実物資料」の展示が目立つ。一方で、行方不明者の情報提供を求めたカード、目撃者の声や映像によって時系列で事件を紹介したコーナーなど、ストーリー性のある展示も多くあった。パネルや内装はミニマルなデザインで統一。コンテンツのノイズがそぎ落とされ、内容がずしりと胸に響く。関連して、犠牲者の追悼を目的とした多数のアートも印象に残った。テロ当日の「空の色」を描いた作品に、じっと見入ってしまった。どうやら、ファクトをストーリーやデザインの力で伝える手法が、世界の潮流のようだ。

     基本計画によると、被災状況の復元ジオラマや、CGとVRによる被災地の再現映像などの展示が予定されているという。同時に、体験談の講演といったプログラムも提供する予定だ。多くの人に訪れてもらえる、かつ記憶を伝えることのできるミュージアムを期待したい。


     ■人物略歴

    田中森士(たなか・しんじ)

     マーケティング会社「クマベイス」(熊本市)代表取締役、ライター。熊本県立高常勤講師、全国紙記者を経て古里の熊本市で起業した。熊本地震後は、復興支援活動に携わりながら、執筆やイベントを通し、被災地の現状を伝えている。モリシは愛称。熊本市南区在住。

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