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スパコン「京」運用終了 成果と技術力を後継機に

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 理化学研究所が神戸市に設置していたスーパーコンピューター「京(けい)」が16日で運用を終えた。2012年9月以来、国産計算機のフラッグシップとして基礎研究や企業の技術開発を支援した。稼働率は94%に上り、1300本を超す論文が生まれた。

 スパコンは、膨大な計算を瞬時にこなす。実験室では再現できない地球規模のシミュレーションや複雑な現象の再現、大量の作業を伴う実験の効率化にも役立つ。

 集中豪雨や台風の発達を精度良く予測する手法、東京都心で大地震が起きた場合の建物ごとの被災予測、抗がん剤や低燃費タイヤの開発など、京を使った成果の一部が暮らしの安全・安心を支えている。

 7年という運用期間は、世界のスパコンの平均寿命の4~5年を上回る。年1・8倍のペースで向上するともいわれる計算速度の世界ランキングでは首位から20位に後退したが、複雑な計算能力を測る別の指標では、15年から首位を維持している。

 開発には1111億円の国費が使われた。開発途中の09年秋には、旧民主党政権の事業仕分けで「2位じゃだめなんですか」と巨額投資を皮肉られた。研究の実用化には時間がかかるため、京の投資効果の算出は容易ではないが、コスト削減を含めて「1兆円程度」と見積もった米企業の調査もある。

 後継機「富岳(ふがく)」の開発費用は1300億円で、うち1100億円が国費だ。京が撤去された場所で21年の稼働を目指す。それまでの間は、国内11の大学・研究所にあるスパコンで対応する。

 富岳は京の100倍の計算性能を想定する。スマートフォンなどに幅広く使われる設計思想を取り入れることで、利便性を高める。ビッグデータを詳細に分析し、その結果を基に人工知能(AI)が予測するなど、データ活用時代に向けた応用の広がりが期待される。

 スパコン大国の米国に加え、近年は中国が巨額の軍事費を投じるなど国際競争は激しい。日本は投資規模では及ばないが、京の蓄積を生かし、世界一を競うのではなく総合力と平和利用で存在感を示せる。

 富士山からもらった名の通り、頂の高さと裾野の広さで、新たな可能性を広げてほしい。

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