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若島正・評 『三体』=劉慈欣・著、大森望・光吉さくら・ワン・チャイ訳、立原透耶・監修

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 (早川書房・2052円)

世界文学として読まれるべきSF

 アメリカのオバマ前大統領が、ニューヨーク・タイムズ紙で書評家ミチコ・カクタニのインタビューに答えて、議会での日常を忘れさせてくれる本として挙げてから、急速に読書界でもその名を知られるようになった、中国のSF作家劉慈欣(リウ・ツーシン)による<地球往時>三部作の第一作『三体』が、ようやく邦訳された。中国での大ベストセラーが、日本でも発売直後にSFとしては記録的な売り上げを見せ、ちょっとした事件を起こしている。

 『三体』は、中国の文化大革命のさなか、紅衛兵たちの糾弾によってある物理学者が虐殺されるという場面で幕を開ける。その一部始終を目撃した、天体物理を専攻する娘の葉文潔(イエ・ウェンジエ)は、後に科学者になっても人類に対する希望を失い、全人類の滅亡を願っていた。そしてあるとき彼女は、人類の史上で初めて、異星文明からのメッセージを受信する……。

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