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教育改革シンポジウム

第13・第14回高大接続教育改革シンポ 英語民間試験は大丈夫? 一刻も早い改革の可視化を

第13回高大接続教育改革シンポジウムのパネルディスカッションで発言する文部科学省大学入試室の錦泰司室長

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 今の高校2年生の受験から「大学入学共通テスト」(共通テスト)が実施される。7月に東京と大阪で開催されたシンポジウム「どうなる2021年度入試」(駿台予備学校、大学通信、毎日新聞社共催)では、入試変更点や本番まで1年半を切ってなお残る懸念点などについて議論が交わされた。

     センター試験から共通テストへの移行など、2021年度入試(21年4月入学)には不透明な部分が多く、生徒や保護者には根強い不安感がある。高校・大学関係者が多く集まったシンポジウムでは、文部科学省高等教育局大学入試室長の錦泰司氏が基調講演を行い、新入試の全体像を紹介した。

     共通テストの注目点は記述式問題の導入と、英語の民間試験活用だ。記述式問題に関して錦氏は、試行調査(プレテスト)を受けた高校生の自己採点が実際の得点と一致しない率が高かったことや、民間業者が担った採点作業において、国語で約0.3%に評価を補正する必要が生じたと説明。「正答条件を分かりやすく高校側に周知するとともに、今年11月の準備事業で採点過程の検証を行って質の向上を目指す」とした。

     英語民間試験については、折しも7月2日にTOEICが離脱を表明し、現場の不安に拍車をかけている。とりわけ公平性が懸念される中、受験機会は高3の4~12月の間に最大2回までとされた。錦氏はこの理由として「受験対策の早期化を防ぐ、受験機会の複数化の観点、経済格差への配慮などを総合的に考慮した」と説明した。

    第13回高大接続教育改革シンポジウムで講演する筑波大アドミッションセンターの島田康行教授
    第13回高大接続教育改革シンポジウムで講演する青山学院大の阪本浩副学長

     次に特別講演として、東京会場では筑波大アドミッションセンター教授の島田康行氏と青山学院大学務担当副学長の阪本浩氏、大阪会場では大阪大副学長の豊田岐聡氏と学校法人立命館理事長の森島朋三氏が登壇。21年度入試の概要や各大学の取り組みを発表した。

     筑波大の島田氏は「入学時に学類を決めない、新たな『総合選抜』方式を導入する」と説明。入学定員の約20%が総合選抜となる。入試改革のもう一つの注目点は「主体性評価」が強調されることだ。高校時代からどう積極的に学びや活動に取り組んできたかを測るという発想だ。島田氏は総合選抜で高校の調査書の活用を明言したが、「評価基準は具体的な記述の有無。『生徒会長』と『クラスの掲示係』といった中身の違いでは差をつけない」とした。また同大は英語民間試験を出願資格とせず、共通テストの英語に加点する形で利用する。ただし実質的な加点効果は低く抑えられた。同大受験者にとっては高校時代の活動に特別に気を使ったり、民間試験対策をしなくても影響は小さく、新入試でも戸惑わずに受験できそうだ。

     青山学院大の阪本氏は「思考力・判断力・表現力を評価する入試に変える。(複数教科の内容にまたがる)総合問題を導入するほか、記述・論述式問題を大幅に増やす。共通テストも積極活用する」と表明。各学部がアドミッションポリシーに基づき「責任を持って受け入れる学生を選抜する」ため、一般選抜(一般入試)の個別学部日程はそれぞれ異なる形態で実施される。一方、従来に近い形で行われる全学部日程も残る。阪本氏は「改革直後は新しい入試に慣れていない受験生も多い。それぞれに安心して受験してほしい」と説明した。入試改革に積極的な大学でも経過措置があるので萎縮することはないが、制度や問題形式の変更は事前によく確認したい。

     大阪大の豊田氏は「一般入試は以前から高度な記述式を導入しており、これまでと大きくは変わらない。定員の約1割を占めるAO・推薦入試で『大阪大でこれを学びたい』という強い意志を持つ人を引き続き取っていきたい」とした。立命館の森島氏は「新しい学習指導要領で学んだ生徒の受験年度から入試を大きく変える方向で検討している」と説明。加えて大学入試改革の前提とされる高大接続改革について、「本質は入試改革ではない。高校と大学の改革がどう連動していくかが大切だ」と話し、グローバル化や研究の高度化といった改革の実践を紹介した。

     大学ごとに対応は分かれるが、根底にある「思考力や表現力を身に付けた人を育てたい」という思いは同じ。制度の違いには、それに対する各大学のアプローチの違いが表れているといえるだろう。

    大阪市内で行われた第14回高大接続教育改革シンポジウムのパネルディスカッション。手前から立命館の森島朋三理事長、大阪大の豊田岐聡副学長、文科省大学入試室の錦泰司室長=2019年7月12日

    ボーダーライン上の合否に調査書活用か

     東京、大阪の両会場ともシンポジウム後半は、駿台教育研究所進学情報事業部部長の石原賢一氏が加わり、パネルディスカッションが行われた。事前に参加者から募った質問を大学通信常務の安田賢治氏が紹介し、パネリストが答える形で議論が進んだ。東京会場でのやりとりをいくつか紹介しよう。

     ――英語民間試験の導入に関して混乱は起こらないのだろうか。

     島田 不安な要素があるのは否定できない。筑波大が出願資格にしなかったのは、それを感じたからでもある。

     錦 制度の詳細を早く周知するのが重要。それぞれの民間試験の特徴など、情報をコンパクトに分かりやすく高校の現場に伝える手段を考えたい。各大学にも活用方法の早めの公表を要請している。

     阪本 青山学院大はすでに、加点か出願資格か、活用方法を各学部・学科が公表している。十分に準備をして臨んでもらえると思う。

     石原 「55万人が受ける中、本当にできるのか」というのが多くの人の本音だろう。英検やGTECの従来型試験は共通テストの対象外で、新方式を受ける必要があるのに、生徒や保護者の理解は進んでいない。大きな問題だ。

     ――主体性評価や調査書についての質問も多い。一般入試ではどう活用されるようになるのか。

     島田 各大学が同じやり方にまとまるのがよいのだろうが、今のところそういう状況にはない。学力差がほぼないボーダーラインの受験生に活用する大学が多いのでは。

     石原 九州地区ではウェブ出願システムで高校での活動歴を記入する仕組みが広まりつつある。少子化の中で良い学生を取ろうとそれぞれの大学が工夫を重ねている。

     ――入試はどう変わるのか。

     島田 学力の3要素(※)のうち何を重視するかは入試ごとに変わる。一般入試で主体性はそこまで評価できない。主体性を大きく評価してほしい人は、それを評価するAO入試などを受けてほしい。

     石原 各大学が多様な入試を準備して、生徒に選択肢を与えている。生徒の目標を考慮し、持ち味を生かせる入試を勧めるのが大切だ。

     不安は尽きないが、変わるのは制度や問われ方だけで、問われる内容は変わらない。最新情報に注意しつつ、知識の習得にとどまらない深い学びを進めることが肝要だ。

    【構成/大学通信・松平信恭】

    ※「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」のこと。改革では「知識・技能」偏重から脱却し、三つの要素をバランスよく育むことを目指している。

    *「サンデー毎日」2019年8月18・25日号より転載

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