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つながり紡いで

外国語体験活動 世界を身近に「心通じた」=山野上隆史 /大阪

地域の子どもに韓国のことを紹介する姜秀京さん=大阪府豊中市のとよなか国際交流センターで、山野上隆史さん提供

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 「楽しかった。いつか行きたい!」。外国の言葉や遊びを体験した後の子どもの声だ。

 外国語体験活動事業は2006年度にスタートした。豊中市教育委員会の委託事業で、とよなか国際交流協会が実施している。地域で暮らす外国人がボランティアとして学校に行き、担任の先生と協働で授業を行う。市内小学校3年以上の全クラスが対象で、1クラス当たり年3コマ程度。18年度は中国、韓国、フィリピン、タイなどのボランティア46人が参加し、15言語を扱った。

 韓国出身の姜秀京(カンスギョン)さんは大学卒業後、仕事やオーストラリア留学を経て、2000年に留学で来日。日本人と結婚し、今は中学生と高校生の子育て中。16年から外国語体験活動のボランティアを始め、17年からコーディネーターとして学校とボランティアのマッチングなどを行う。

 授業では韓国語のほか、韓国の食べ物や民族衣装を紹介したり、一緒にチェギ(蹴鞠(けまり))を作って遊んだりした。一緒にやった歌や遊びは、授業後もクラスではやったりする。姜さんは「外国人が来て授業をするのは、子どもにとってとても新鮮。普段はなかなか授業に集中できないと聞いていた子がしっかり取り組んでくれ、中には授業後に校門まで見送ってくれる子もいる。心が通じた感じでとてもうれしい」と話す。

 普段、外国人と出会わない子にとって「地域に外国人が暮らしている」ことは大きな発見であり、世界は急に身近になる。昨年実施したアンケートでは「もっと知りたい」「韓国の子どもはこんなに楽しい遊びをしているんだな」「韓国と日本は今はあまり仲良くないのに来てくれてありがとうございました」「先生みたいに自分のことを伝えられる素敵な人になりたい」--といった声があった。「子どもたちはニュースやネットでいろいろな国のことを知っています。でも、実際に会ってコミュニケーションする中で『テレビの中の世界だけじゃない』って偏見やイメージが壊れるのが分かります」

 一方、教える側の外国人にとっても社会参加や元気を取り戻す貴重な機会だ。たった1回でも「自分にもできることがあると少し自信が持てました」と元気になる人もいる。「子どもともっと話したい」「いろいろなことを教えたい」と改めて日本語学習に励む人や、仕事の休みを取って参加する人もいる。

 さらに外国ルーツの子どもの元気にもつながる。いつもと違って「自分とルーツが同じ人が教壇に立っている」「自分にしか答えられない質問がある」「友だちが自分のルーツの言葉や遊びを楽しんでいる」--ということに安心し、自分のルーツを表現するきっかけを見つける子がいる。子どもたちの表情がぱっと変わる瞬間はこの事業の醍醐味の一つだ。

 姜さんは初めての授業で最後に「私たちは大きな宇宙の中の、小さな星の中の、すぐ近くに住んでいる。お互いにけんかするんじゃなくて、お互いに大事なんだよ」と伝えたという。同じ地域で暮らす外国人と学校はうまくつながることで、豊かな学びを生み出すことができる。多文化共生社会に向けて、出会いはそれぞれにとって大きな大きな第一歩だ。


 地域の活性化や多文化共生に取り組む市民が執筆します。次回は9月27日掲載予定。


 ■人物略歴

やまのうえ・たかし

 公益財団法人とよなか国際交流協会理事兼事務局長。1977年、大阪生まれ、神戸育ち。高校生の時、阪神大震災を経験。主な共著に「外国人と共生する地域づくり 大阪・豊中の実践から見えてきたもの」(明石書店)。

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