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社説

抑留者遺骨の取り違え 隠蔽体質は改めるべきだ

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 海外戦没者の遺骨収集が進められるなか、あってはならない事態だ。

     第二次大戦後、シベリアに抑留された日本人の遺骨として、厚生労働省が5年前に収集し持ち帰った16人分に、日本人の骨ではない可能性が浮上した。

     日本でのDNA鑑定結果が昨年8月、非公開の会議で報告されたが、NHKが報道するまで厚労省は約1年間、公表しなかった。ロシア側にも伝えていなかったという。

     「鑑定結果の精査や整理に時間がかかった」ためと釈明するが、隠蔽(いんぺい)と受け取られても仕方がない。肉親の遺骨の帰還を待ちわびる遺族の心情を考えると、不誠実で、責任感に欠ける。

     遺骨の取り違えがもっと多い可能性は十分にある。収集事業自体が揺らぎかねない。厚労省は迅速に検証し、事実を公表すべきだ。

     8月23日は「シベリア抑留の日」だ。1945年のこの日、旧ソ連の指導者スターリンの指令で約60万人の日本人がシベリアやモンゴルに連行された。過酷な労働に従事させられ、栄養失調や病気などで約5万5000人が亡くなったという。

     遺骨収集は91年、ロシア側から提供された資料に基づき始まった。今年6月現在で約2万1900人分が収集された。しかし、日本人の身元が特定されたのは1135人分だ。

     今回は、埋葬地を誤った可能性があるという。正確を期するためには、資料の精査やロシア側との情報交換を密にする必要がある。現地での鑑定方法も改めて検討すべきだ。

     遺骨収集での不祥事は初めてではない。2016年にはロシアで61人分の歯が誤って焼かれ、身元の特定ができなくなった。過去の教訓が生かされていない。

     シベリア抑留は第二次大戦後の大きな悲劇でありながら、抑留者への偏見などもあり研究や実態解明が遅れてきた。厚労省の態勢も不十分だ。ロシアから死亡者名簿や膨大な個人データが提供されているが、翻訳が追いつかない状態だ。

     元抑留者の平均年齢は96歳になり、記憶の風化も懸念される。継承は国の責務でもある。悲劇を繰り返さないためにも、調査態勢を強化して、取り組むべきだ。ロシア側や民間研究者との協働も不可欠だ。

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