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責任能力ない男性の突き飛ばし事件 両親の監督義務なし 遺族の賠償請求棄却 大分地裁判決

大分地方裁判所=大分市荷揚町で、河慧琳撮影

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 知的障害があり、刑事責任能力がないとされた男性が、大分市内でマンションの管理人を階段から突き飛ばして死亡させた事件を巡り、管理人の遺族が男性と同居する親に責任があるとして賠償を求めた訴訟の判決が22日、大分地裁であった。佐藤重憲裁判長は「両親が息子の加害行為の防止に向けた監督義務を引き受けたとまではいえない」として請求を棄却した。【河慧琳、田畠広景】

年齢差や家庭内暴力考慮

 加害者の男性は、知的障害など精神障害があるとして入退院を繰り返していた。突き飛ばし事件で逮捕された後、刑事責任を問えないとして不起訴処分となった。その後、入院先の病院で死亡した。

 管理人の遺族が2017年10月、男性の両親を訴えており、両親に男性の監督義務があるかどうかが争点だった。

 遺族側は、「両親には息子が1人で外出しないようにする義務があった。両親に息子の加害行為の責任を問うのが相当だ」と主張していた。

 一方の男性の両親側は「事件は突発的に発生し、予見不可能だった。両親ともに高齢で息子から暴力も受けており、監督するのは容易ではなかった」と反論していた。

 判決は、事件の予見可能性を否定した上で、「両親は息子と同居していたが、直ちに息子を見守る法的な義務が発生するとは言えない」と判断した。

 更に両親と男性との年齢差や、男性の家庭内暴力などを考慮すると、「両親が息子の世話をしながら同居していることを踏まえても、息子の他者への加害行為の防止に向けた監督を行い、息子の監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情があるとは認められない」と指摘。両親が賠償責任を負わないとの結論を出した。

家族の責任限定的 司法の流れに沿う判断

 責任能力がない子供や精神障害者が、事件や事故で他人を傷つけたとして賠償責任を求めた訴訟で、従来は家族ら監督義務者がその責任を免れた例はほとんどなかった。

 責任無能力者の監督者らは、その義務を怠らなかった場合を除いて、第三者に加えた損害を賠償する責任を負う――との民法の規定を厳格に適用していたためだ。しかし、近年は家族の賠償責任を限定的にとらえる司法判断が相次ぐ。

 最高裁は2015年4月、11歳の子供が蹴ったボールをよけようとしてバイクの男性が転倒した事故で、「親が事故を具体的に予見できる事情がなかった」と両親の賠償責任を否定した。

 また、認知症の男性が線路に立ち入って、電車にはねられて死亡し、JRが賠償を求めた訴訟でも、最高裁は16年3月、「事情を総合的に考慮して責任を問うのが相当か公平の見地から判断すべき」として介護する家族に賠償責任はないとした。

 今回の訴訟では、加害男性の両親は共に70代と高齢だった。男性が他人を傷つけた類似事件はなかった一方で、両親は家庭内暴力で骨折するなどの大けがを負わされていた。

 判決は、こうした事情を考慮した上で、家族の賠償責任の基準を緩和した昨今の司法の流れに沿ったといえそうだ。

 引きこもり家族会の代表を務める松本太郎さん(70)は、「精神障害がある子と親のトラブルは多発している。親が年を取って世話ができなくなる家庭も多い」と指摘する。

 「体が大きくなった子供の責任を親が負うのには限界がある。判決は実情に沿った普通の感覚だと思う」と話した。

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