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No Pain No Gain

代表選考が佳境 選手は一回の練習で自分の力を出し切るべし=箕内拓郎

ラグビー元日本代表主将・箕内拓郎さん

 ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会の開幕まで1カ月を切りました。私が現役の時もそうでしたが、この時期の選手は複雑な思いを抱えながら、日々過ごしていると思います。最終メンバーに自分が入れるかどうかはもちろん、何試合かテストマッチを経験し、個人のパフォーマンスやチームの成熟度についても、いろいろな思いが頭を巡ります。

     けがについても考えてしまう時期ですが、故障を怖がっていると良いアピールは難しい。特に2007年のW杯前の私は春先にけがをしたので、早く治し、早くベストな状態に持っていかないと、という気持ちが大きかったです。自分がW杯メンバーに入る確証を持てていませんでしたし、自分の状態を上げることに精いっぱい。今、思い返しても、いろいろ葛藤しながらラグビーと向き合っていました。

     一方で、そこで選手ができることは、いたってシンプルです。一回一回の練習で自分の力を出し切る――。現在の日本代表は、組織的に攻守の動きを組み立て、組織力を大切にしています。チームの決めごとに対して遂行力がなかったり、内容にムラがあったりすれば、W杯では「致命傷」になりかねません。だからこそ、一日一日、コンスタントに良いパフォーマンスを見せて、信頼を勝ち取ることが重要になるのです。

     最終メンバーが発表されれば、本番に向けてチームのまとまりは一層、加速していきます。近年は「チームビルディング」という言葉がよく使われていますが、ここまでくると特別なことをしなくても、自然と結束はより強固になってくるものです。メンバーを外れた選手やけがをした選手、一緒にきつくて苦しいトレーニングをした仲間が、W杯のグラウンドに立つことができない現実があり、その悔しさを想像しただけで、身が引き締まり奮い立った感覚を、今でも覚えています。

     海外出身の日本代表選手が多いことが度々、話題になりますが、彼らは日本選手以上に日本人の「心」を持った者たちばかりです。07年当時の日本代表ヘッドコーチだったジョン・カーワン氏は、就任間もなく「武士道」についてのミーティングを行い、日本代表として戦う心構えを説いていました。今のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチやリーチ・マイケル主将も、日本の歴史や文化についてみんなで学ぶ機会を積極的に取り入れていると聞きます。仲間のために人一倍ハードワークを課し、体を張る彼らの活躍にも、W杯本番では大いに注目していきたいです。

     前哨戦となる国際試合「パシフィック・ネーションズカップ」(7~8月)でも3連勝。特に、ラインスピードを意識した守りは効果的でした。相手に時間とスペースを与えない防御は、どの相手にも有効に生きてきます。グループリーグで対戦する強豪のアイルランド、スコットランドも警戒が必要だと感じたレベルだと思います。

     ただし、本番の舞台は、誰も経験したことのない初めての自国開催のW杯です。周りでどんなことが起きて、どんなプレッシャーを感じるか、というシミュレーションは、今からみんながしておくべきです。絶対に結果を残してやるという「熱さ」と、周囲が盛り上がっても、しっかり地に足をつけていくんだという「冷静さ」をバランス良く持つことで、心身ともに万全に近い状態でW杯に備えることができるのです。

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