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沼野充義・評 『源氏物語 A・ウェイリー版 全4巻』=紫式部・著、毬矢まりえ・森山恵姉妹・訳

 (左右社・各3456円)

古くて新しい現代の世界文学

 『源氏物語』には、与謝野晶子を初めとして、谷崎潤一郎、円地文子、瀬戸内寂聴などによる数多くの近・現代日本語訳がある。現在、角田光代による最新訳も進行中だ(河出書房新社『日本文学全集』所収、全三巻のうち上・中が既刊)。そこにまた一つ、新たなバージョンが加わった。毬矢まりえ、森山恵の姉妹(姉は俳人、妹は詩人)による共訳で、最近第4巻が出て完結した。各巻ほぼ七百ページもある堂々たるものだ。しかも飛び切りユニークな訳文なので、これ以上新訳が要るだろうかなどという疑念を軽く吹き飛ばしてしまう。

 何はさておき、実例を見よう。誰もが知っている物語の冒頭は--「いつの時代のことでしたか、あるエンペ…

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