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「みなさまに敦志のことを多く知っていただきたい。それしか私どもにはできない」石田さんの父会見詳報

記者会見する石田敦志さんの父基志さん=京都市伏見区の伏見警察署で2019年8月27日午後7時11分、川平愛撮影

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 京都市伏見区の「京都アニメーション」第1スタジオで起きた放火殺人事件で、京都府警は27日、死亡した35人のうち未公表だった25人の身元を実名で公表した。犠牲となった石田敦志さん(31)の父、基志さん(66)の記者会見の内容(抜粋)は、以下の通り。

  ◇   ◇

人生にこんなに理不尽で悔しくて苦しくて悲しいことがあるとは

 <コメント読み上げ>

 私どもの敦志は、私にとってはできすぎた息子だった。温厚で人と争うことが嫌いな優しい子だった。夢を追いかけ高いハードルを自力で飛び越え夢をかなえた。数々のアニメ作品に参加し、私たちに夢と感動を残してくれた。本当に素晴らしい子だった。小さい頃からアニメに興味を持っていた。大きくなったらアニメの仕事がしたいとよく言っていたが、大きくなるにつれ、本気だと思うようになった。アニメ業界の環境に不安になり、アニメ業界に入ることを反対したが、(敦志は)あきらめなかった。親を苦しめたくなかったのだろう。アニメの勉強と学業を両立させた。私が与えた最後の課題が京都アニメーション(に就職すること)だった。クリエーターとしての生活保障がしっかりしていて、大事にする会社と知ったから。ここに入ることができるのならば、心から応援できると思った。今から思えば随分遠回りをさせてしまったと反省している。

 入社まもない頃、先輩から「アニメーターはやはり原画(担当)を目指すべきだ」とアドバイスを受けたそう。しかしながら、「動画を自然にしかも美しく動かすことも非常に魅力に感じる」と私に言っていた。実に敦志らしいなとその時思った。「動画を自然に美しく」にこだわった10年だったように思う。彼が本当に表現したかった「自然にしかも美しく」に磨きがかかるのを楽しみにしていたのに、志半ばで逝ってしまった。この怒りと悲しみは筆舌に尽くしがたい。人生にこんなに理不尽で悔しくて苦しくて悲しいことがあるとは、思ってもいなかった。胸が張り裂けそうだ。

 入社が決まり、敦志の引っ越しの時に本社にごあいさつに行ったら、Aさん(社員の実名)とBさん(社員の実名)が対応してくれた。「弊社で3年頑張ればどこでも通用する」と言われた。「京都アニメーションでお手伝いできるのは光栄」と言ったら、Aさんは「一緒に(作品を)作るんです」と言ってくれた。その後、(今回放火された)第1スタジオに案内してもらった。Bさんも「一緒に作るんです」と言ってくれた。ここなら大丈夫、と確信したことを昨日のことのように覚えている。

 一人の卑劣な犯罪者のために、まだまだ多くの素晴らしい作品を出したであろう才能と想像力にあふれた多くの人材が傷ついたのは、私ども遺族や被害者家族のみならず、日本の大きな損失だ。このような人材は一朝一夕ではできない。残念でならない。敦志が愛した京都アニメーションを応援してあげてください。石田敦志というアニメーターが京都アニメーションに確かにいたことを、どうかどうか忘れないでください。

「けいおん!」2作目で、初めて名前が出た時、本当にうれしそうだった

<記者の質問への回答>

 私ども家族にとって、唯一の男の子で末っ子。人と争うことは嫌いだが、スポーツをやらないということではない。サッカー、水泳は人並み以上にやれた。体育会系の私とは違い、人と争うことを好まないのかなと思った。また親思いだった。私と性格が真逆だったが、馬が合った。家族旅行もたくさんした。私にもたくさん付き合ってくれた。鹿児島の指宿に日帰りとか、遠出でも快く付き合ってくれた優しい子だった。「けいおん!」を皮切りに記憶しているだけでも30以上の作品に参加しており、そのたびにテレビ放映があれば、放送局と時間を知らせたり、映画なら必ずチケットを送ったりしてくれた。エンドロールに「石田敦志」の名前があるのを見るのが家族の楽しみだった。何度も夢と希望を与えてくれた。

 一番残念なのは、親孝行だけをして逝ってしまった。私は何もしてやっていない。夢の京都アニメーションに採用されたのもすべて彼の努力。大学で情報工学の勉強をしながら、夜間の専門学校でアニメーションを学んで両立した。みなさまに敦志のことを多く知っていただきたい。それしか私どもにはできない。そういった思いで今、ここに座っている。

 (本人の)第1希望は京都アニメーションだったが、一人息子なので、アニメーションの環境を自分(基志さん)なりに調べた。雑誌だったと思うが、京都アニメーションの企業理念があった。クリエーターを大事にしたいという思い、自社完結型でクリエーターの生活保障ができる会社と知り、(京アニは)他の会社と明らかに違うと。素人調べではあったが、かなりハードルが高いと思った。敦志がそれぐらいの技量があるのかは、私にとって未知数だった。半分はあきらめてほしいという思いがあって、京都アニメーションに採用されるなら応援するよ、と言った。

 私なら反発したと思うが敦志は優しい子で「わかった。頑張る」と。採用通知を見たときはさすがの私も舌をまいた。びっくりした。私なりに京都アニメーションのレベルをある程度理解していたつもりだったので、採用通知を見たときは何度も確認した。誤字があるのではないかと。

 約10年前に入社した。「けいおん!」の2作目で、初めて動画のところに「石田敦志」の名前が出た時、本当にうれしそうだった。敦志は時間があれば(故郷の)福岡によく帰って来ていたが、多分むりやり時間を作って、自分の感激を当然喜んでくれる家族に直接言いたかったのではないか。「こういうところが難しかった」「人間の動作そのものを表現しないと」などとベテランの社員さんが言うようなことを、受け売りだと思うが本当にうれしそうに語っていた。なかなかそういう表情は見せない。ああいううれしそうな姿はなかなか見なかった。

 Cさん(社員の実名)から直接指導を受けたのが、非常にうれしそうだったのが印象に残っている。遺品整理でCさんと写った写真が出てきた。

 敦志の死については7月18日当日に、実感としてはないのだが、そういうことなんだなと頭では理解した。福岡から事件報道の直後に車で走ってきた。その間、京都アニメーションとは連絡を取ったが、混乱していて電話では被害の程度がわからなかった。

 次の日に、遺体を特定しないといけないので私のDNA(サンプル)を提出していったん福岡に戻った。24日だったか、警察から「残念ながら一致しました」とお聞きした。正直なところいまだに実感がなく、受け止めきれない。遺影は、はにかんだいつもの敦志の笑顔。その笑顔がこの世にもうないということが、どうしてものみ込めない。いまだに本当なんだろうか、というのが正直な気持ち。

 遺影はCさんと写ったものを使った。うれしくて仕方ないのに、はにかんだ笑顔。敦志らしい。Cさんは最も憧れた先輩。葬儀ではCさんの了解を得て、その写真を流した。Cさんは涙ながらに「石田君がいなかったら今の京都アニメーションはない。本当ですよ、お父さん」と何度もおっしゃった。社交辞令的なあいさつではないと私は思った。

 冷静沈着な息子というイメージだったが、Cさんがおっしゃるには、京都アニメーションは「みんなで創る」という意識が強いので、それぞれの意見が飛び交いややもすればギスギスすることもあるが、そんな雰囲気を和らげたのが敦志だったと言われた。みなさんからかわいがっていただいたのだと思った。

私の息子を含め、希望と誇りを持って毎日仕事をしていた

<石田さんの最後のコメント>

 私の今の心情としては、こういった事実は認めないといけないんだろうなと。みなさん志半ばで旅立ったが、きっと来世で仲間と再会して、みんなとともに夢をかなえてくれるのだと思いたい。それぞれ、いろんなお考えがあると思うが、あえてこの場に出してもらったのは、京都アニメーションの方々は選ばれた方々。私の息子を含め、希望と誇りを持って毎日仕事をしていた。それぞれ名前を持っていた。私の息子も石田敦志という名前を持っていた。それが(犠牲になった)35分の1で果たして本人たちはいいのか。批判ではない。私の思いで言っている。決して35分の1ではない。みんな誇りを持って個々のクリエーターとして毎日頑張っていた。そういった人たちに、我々残った者ができることは、やはりそこでそうやって頑張っていたんだ、ということを多くの人に記憶していただく、覚えていただく、忘れないでください、と言うことしかできないと思う。自分としてはしんどいが、あえてこの場に出させていただいた。

 人は一度は旅立たないといけない。人との別れは本当につらい。しかし、何が一番つらいと言えば、順番が違うこと。順番が違うことは本当につらいこと。いろんな方がいろんな思いでいらっしゃるが、私の思いは、石田敦志の名前、今回理不尽な被害にあったみなさんの名前を、京都の伏見、宇治で頑張っていたんだということを長く残してほしい。

 私にとっても私の家族にとっても京都は好きなところ。伏見、宇治というのは特別なところ。伏見に行けば敦志の名前が見られる、というように、慰霊碑などに残していただければと切に望む。実名公表を望まない方の気持ちも、私は痛いほどわかる。

 あえて私の考えを申しますと、残った我々がここは頑張りたいと私の家族は思っている。他の家族にそうして(公表してほしい)、というわけではない。我々の家族は、我々が頑張るんだ、と。いろんなバッシングもあるかもしれないが、我々が頑張ろうと。それでも敦志の名前を出したいというのが私ども(家族)の一番の考えだ。

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