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G7包括宣言見送り 米の独善阻めぬむなしさ

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 先進国が40年以上かけて築いた協調が空洞化の危機に直面している。

 フランスで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、国際的な課題への対応を包括的に盛り込んだ宣言を見送った。終了間際に急きょまとめた文書は、極めて簡略で内容も限られた。1975年のサミット創設以来初めてのことだ。

 焦点の一つは、米中貿易戦争で懸念が強まっている世界経済への対応だった。だが文書は「経済安定に取り組む」と一般論を短く書いただけで、昨年まで明記していた「反保護主義」は盛り込まなかった。トランプ米大統領が反対しているためだ。

 かつてG7がそろって推進した地球温暖化対策に関しても、トランプ氏の抵抗で全く触れなかった。

 主要先進国はグローバルな課題に協調して取り組む責任がある。包括的宣言は首脳による具体的な意思表明だ。そうした基本認識すら共有できない事態を招いたのが「米国第一」を振りかざすトランプ氏だ。

 今回トランプ氏はあえてG7直前に対中制裁強化を打ち出し、協調軽視の姿勢を一段と際立たせた。G7では、欧州連合(EU)からの強硬離脱を唱えるジョンソン英首相とさっそく会談し、支持を表明した。

 米国の独善を阻めぬ背景には、ドイツなど協調重視派の政権の求心力が低下したこともある。超大国との溝の深さに無力感もあるようだ。

 来年のG7議長はトランプ氏が務める。大統領選への成果を引き出そうと、協調そっちのけで各国との取引を優先する場にしかねない。

 G7の意義は民主主義や法の支配などの価値観を共有し、国際的課題に協調して対応してきたことだ。中国などの発展に伴いG7の経済規模が世界に占める比重は下がったが、理念で国際社会をリードする重要性は変わらない。難民やテロなどG7の結束が必要な課題は多い。

 G7が空洞化すると、不利益を被るのは日本だ。国連安全保障理事会の常任理事国でない日本にとっては、国際社会で発言権を確保する貴重な機会となってきたからだ。

 安倍晋三首相はトランプ氏との絆を強調し、米欧の橋渡し役を自任する。ならばトランプ氏を説得し協調立て直しに力を注ぐべきだ。G7の将来は日本の国益に深く関わる。

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