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東京へ ともに歩む

毎日新聞

2020年東京五輪のゴルフ競技で日本人選手のメダル獲得に期待を寄せるタケ小山さん=東京都港区で、手塚耕一郎撮影

東京・わたし

“屋根裏のプロゴルファー”タケ小山さん「ゴルフ広め、レガシー残したい」

 プロゴルファーや解説者として活躍するタケ小山(本名・小山武明)さん(55)。TBSテレビ「サンデーモーニング」の「屋根裏」と呼ばれる副調整室から解説してきたことで「屋根裏のプロゴルファー」とも呼ばれています。ゴルフを大衆に開かれたスポーツにし、レガシーを残したい--。オリンピックにかける思いは強く、日本選手の金メダルに期待を寄せています。(聞き手・山本修司)

    豪快なドライバーショットを放ち、ボールの行方を追うタケ小山さん=株式会社三桂提供

     ――前回大会に続いてゴルフが競技に選ばれ、盛り上がりをみせています。

     ◆実は長い間、ゴルフを競技として復活させる動きはありました。例えば1996年のアトランタ大会。アトランタといえばゴルフのマスターズ・トーナメントがまず浮かびますが、その会場がオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ(ジョージア州オーガスタ)で、チェアマンはアトランタ・オリンピック組織委員会会長でもあったビリー・ペイン。ということで「ゴルフを復活させるのならオーガスタを貸すよ」という話になりました。

     ところが、オーガスタには黒人のメンバーがいない。このため開催地として立候補した際に急きょ、黒人メンバーを誕生させるんです。その当時からアメリカにもダイバーシティーが認知され始めていたんですね。南北戦争の南部11州の一つでやるアトランタ大会は多様性も打ち出し始めた大会で、「ゴルフ=白人=金持ち」というスポーツをどうやって復活させるかということを、アメリカのゴルフ関係者は真剣に考えていました。

     このころはまだタイガー・ウッズが出てきていないので、ゴルフでは黒人と白人の壁はすごく厚かったんです。ロンドン大会でも、ゴルフ発祥の国ということでいろんな動きがあったんですけどうまくいかず、結局復活はリオデジャネイロ大会になりました。

     ――東京大会の会場、霞ケ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市)は候補地として決定された以降も、女性会員を認めていませんでした。

     ◆ただ、オーガスタでも当時、女性のメンバー誕生までには至っていませんでした。90年にロン・タウンゼントという黒人メンバーが誕生して、女性のメンバーは2012年になってから。つい最近のことなんです。いま多様性の時代ですから、女性会員を認めたことは霞ケ関にとってもよかったんではないですか。

     ――競技に選ばれたということはゴルフの普及も大きな目的ですが、会場は誰でも利用可能なパブリックコースの方がいいという声がありました。

     ◆ゴルフ先進国のアメリカもヨーロッパも、またリオ大会でもパブリックコースという流れだったのですが、今回の会場である霞ケ関はエクスクルーシブ(閉鎖的)な会員制で、さらに地理的にも選手村から遠い。この選択には今でも疑問です。いまアメリカでさえゴルフ人口が減っている中で、盛り上げのためにオリンピック・ゲームとして復活させた中では、会員制ゴルフ場での開催は逆行していると思います。

    2020年東京五輪のゴルフ競技について語るタケ小山さん=東京都港区で、手塚耕一郎撮影

     ――タケさんは若洲ゴルフリンクス(東京都江東区)を主張してきました。

     ◆16年の大会にも東京は立候補しましたが、このときの案は若洲でした。世界の選手が活躍する姿を見た人がそのゴルフ場でやってみたいと思っても、会員制では難しい。改造すれば7100ヤード、パー71のいいコースができるし、ゴルフの会場はほかの一部競技の会場とは違い、いくらお金がかかってもペイできるんですよ。日本ジュニア、日本アマチュア、日本女子オープン、日本シニアオープン、日本オープンの各ゴルフ選手権をローテーションで必ず開くという聖地にもできた。最古の歴史を誇る全英オープンが開かれるセントアンドリューズ・リンクスのように。

     4年に1度のオリンピックは、ゴルフが進むべき指標のようなもので、リオ大会ではわざわざパブリックコースを作ってまでやった。レガシーとかモニュメントとかランドマークというものは大事で、万人が共有できるものでないと。そういう意味では地理的な面も含めて、若洲が最適だったと思っています。

     ――それでも霞ケ関でゴルフを盛り上げなければなりません。

     ◆あのコースでは日本ジュニアゴルフ選手権をやっていて、この大会は「緑の甲子園」とも呼ばれています。そこにオリンピアンが集まって来て戦った姿をジュニアたちが見て、「よし自分も」と思うところに意義があると思います。高校野球の甲子園のようにね。

     ――リオではウイルス性の感染症・ジカ熱などの心配もあり、有力選手が参加を見送りましたが、東京ではどうでしょうか。

     ◆7月の全英オープンが終わって、アメリカのプレーオフが始まるまでにあるのが東京大会。10億円のボーナスが出る最高の大会の前に時差のある日本に来るかというと、難しい面はあります。

     ただ、タイガーは来ます。デンマークのIOC総会でリオでのゴルフ復活が決まったのですが、国際ゴルフ連盟が復活を訴えたビデオレターで、タイガーとミシェル・ウィーがコメントを出しているんです。

     タイガーはマイノリティーから来たゴルフ界のヒーロー。父親が軍人で、名門ではなく一番格下のゴルフ場から出てきた人です。テニスの大坂なおみはロングアイランドの格下のテニスコートで練習してたからアメリカでも人気があるんですが、こういった人はオリンピックでも好かれるし、活躍すると盛り上がりますね。

     ――全英オープンですごい日本選手が出ましたね。

     ◆渋野日向子ね。これは本当によかった。ワールドランキング(全英直後に14位)を落とさなければ、オリンピックに出られる(ワールドランク15位以内なら最大4人出場可能)。渋野と米国で活躍する畑岡奈紗が行けると思います。

     でも、お隣の韓国は4人がオリンピックに出る予定です。それなのに、日本も国内で頑張っている鈴木愛と成田美寿々がランクを上げて4人を送り出そうとは誰も言わない。何とか4人出てほしいと思います。その方が勝つ可能性も高くなる。男子も松山英樹に加えて石川遼が頑張って出れば盛り上がります。男子4人はちょっと難しいけどね。

     ところで、渋野は勝つべくして勝った。「もぐもぐ」とか「タラタラしてんじゃねーよ」とかそんなことはどうでもいい。これまで優勝した「ワールドレディスチャンピオンシップ」の茨城ゴルフ倶楽部、「資生堂アネッサレディスオープン」の戸塚カントリー倶楽部はいずれも林間コース。今回の全英はリンクス(海沿いの自然の地形を生かしたコース)ではなく林間コースだった。

     渋野は、木で囲まれてボーリング場みたいになった林間コースが得意で、広いところではショットが曲がる。ちなみにオリンピックで使われる霞ケ関は林間コースです。チャンスありますね。期待したいと思います。

    力強いスイングを見せるタケ小山さん=株式会社三桂提供

    タケ小山

     1964年7月生まれ、東京都八王子市出身。中央大経済学部卒、大学卒業後の89年、スポーツ振興フロリダ・グレンリーフリゾートの所属プロとして渡米、90年の世界対抗戦で日本代表として男子個人4位。96年からフロリダ・オーランドのゴルフチャンネルで解説を始め、97年に北フロリダPGAウィンターツアー賞金王獲得。2007年の北海道オープン選手権3位に入り、日本オープンゴルフ選手権に出場。09年早稲田大大学院スポーツ科学研究科修了。TBSテレビ「サンデーモーニング」の解説者として、テレビ、ラジオ、イベントなどに出演しているほか、「The News Masters TOKYO」のメインパーソナリティーを務めた。

    山本修司

    毎日新聞オリンピック・パラリンピック室長。大分県出身。1986年入社後、千葉支局、東京社会部、西部報道部、横浜支局長、社会部長、西部本社編集局長などを経て2019年5月から現職。事件記者一筋で、スポーツ取材経験は地方予選程度だが、中学から40代までサッカーのプレーと指導、審判に熱中。今は筋トレとランニングで体調を整える。