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余録

万葉集には「春雨(はるさめ)」を詠んだ歌は多いが…

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 万葉集には「春雨(はるさめ)」を詠んだ歌は多いが、「秋雨(あきさめ)」という言葉はない。「秋の雨」と詠んだ歌は1首あるだけという。どうも「あきさめ」という音が和歌にふさわしくないと思われていたようなのである▲鎌倉時代の歌論書には「<あきさめ>などいえるたぐいはおかしきことなり」とある。江戸時代には俳句で「秋雨」が使われ出したが、文人の間ではなお「すさまじき(興趣のない)」と評され、「大いに非なり」と難じた人もいる▲なぜ秋雨がこうも嫌われたか分からない。今日の歳時記で「秋雨」が「秋の雨」の副題なのはその名残だろう。「寂しく秋に降る冷たい雨」は秋雨の本意という。だが今、秋雨前線が各地にもたらした豪雨はそんな風情と無縁である▲先週から西日本に停滞する秋雨前線に南からの湿った暖気が大量に入り込み、激しい雨を降らせる積乱雲の帯が生じた。九州北部では1日で平年の8月の雨量の倍を超える雨を記録したところも相次ぎ、冠水、浸水の被害が続出した▲困ったことに前線はなお活発な活動を続け、きょうは九州から関東にかけ大雨の恐れがあるという。被災地でも引き続き新たな土砂災害や川の氾濫(はんらん)を警戒せねばならない。一刻も早い復旧が必要な被災者には何とも非情な秋雨である▲まだ8月なのに西日本での秋雨前線の大暴れはどうしたことか。近年の気候変動を思えば、歳時記の「秋雨」の本意も変えねばならないのだろうか。昔の文人が嫌った通り、「秋に降るすさまじい雨」にである。

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