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社説

政権交代選挙から10年 大変動期の野党像を探る

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 自民党から旧民主党への政権交代が確定した2009年衆院選からきょうで10年になる。有権者の投票がストレートに政権交代をもたらしたのは戦後初めてだった。

 それほど歴史的な出来事だったのに、積極的に振り返る機運に乏しいのは「失敗に終わった政権」のイメージが定着しているからだろう。

 確かに旧民主党は政策も統治能力も未成熟のまま政権に就いて自壊した。最大の過ちは官僚を排除しての極端な政治主導を試みたことだ。

 ただし、政権交代に意義がなかったわけではない。政権を奪還した安倍晋三首相は思想的には右派の立場をとりながら、幼児教育の無償化や最低賃金の引き上げなど、政策のウイングを左に広げている。

 再び政権を奪われないよう旧民主党の政策を取り込む思惑もあるだろう。あの政権交代がなければ、硬直化した自民党の政策を見直すのは難しかったのではないか。

英米の政党政治も混迷

 ところが「安倍1強」の長期政権下、旧民主党は党名を変えながら再編を繰り返した。野党が多弱化した結果、国会の行政監視機能は空洞化が進んだ。さらに官僚機構が首相官邸におもねる忖度(そんたく)が横行している。

 民主主義が健全に機能するには与党に緊張感を与える野党が存在し、競争の働く政党システムが必要だ。もう一度、国政の課題として野党のあり方を考える時期に来ている。

 1990年代の政治改革で小選挙区制が導入されたのは、自民党に対抗し得る野党勢力の形成を制度的に促し、政権交代が起こりやすい政治状況を作り出すためだった。

 万年与党体制を変革しようという大きな民意が日本社会にあり、それがいったんは結実した。

 90年代は冷戦終結を受けて世界的に民主主義と市場経済が万能のように思われた時期だ。日本が政治改革のモデルとしたのが、2大政党が政権交代を繰り返す英国だった。

 だが、今やその英国が欧州連合(EU)離脱をめぐり「決められない政治」の混迷を極めている。同じ2大政党制の伝統を持つ米国もトランプ大統領のもとで分断が進む。

 中国が台頭し、米国の力が相対的に落ちた21世紀の世界は政治的にも経済的にも大変動期を迎えている。グローバリズムの進展は資本やヒト・モノの移動を拡大させる一方、それぞれの国内で経済格差を広げた。

 英米の2大政党は、伝統的な価値観を守ろうとする保守系の政党と、社会的な平等を重視するリベラル系の政党とに分かれ、中間所得層の取り込みを競ってきた。

 しかし、グローバル化はナショナリズムを刺激し、排他的な政治勢力を生むことにもつながる。

 保守系の政党は自国第一主義へと右傾化し、その反作用としてリベラル系政党は反緊縮財政など左派色の濃い政策へと傾く。政党の主張が両極化すると、政党間の調整によって合意を形成する民主主義の機能が損なわれる。英米の現状がそれだ。

将来不安に応える必要

 国際秩序や世界経済が大きく変動していく中にあって、政党システムはどうあるべきなのだろうか。

 日本でも自民党に右傾化、立憲民主党に左傾化がみられる。英米と大きく異なるのは、政権批判の受け皿となるべき野党の多弱化だ。こぼれ落ちた民意が棄権に流れた結果が5割を割った参院選の低投票率だとみることもできる。

 立憲民主党は秋の臨時国会へ向けて国民民主党と統一会派を組むという。巨大与党と対峙(たいじ)する野党共闘の先に再度の政権交代を見据えるなら元のさやに収まるだけでは厳しい。

 憲法改正や原発政策のような先鋭的な課題で野党内の主導権争いをする従来の発想からも脱却すべきだ。

 民主政治は幅広い民意を集約する政党がなければ成り立たない。野党が与党に対峙するにはそれなりの大きなかたまりであることも必要だ。併せて重要なのは、与党への対抗軸となる政策パッケージである。

 国政選挙で連勝を続ける安倍政権だが、それほど強い支持があるわけではない。経済成長頼みの政権に当面の安定を期待するが、このままで大丈夫なのかという漠然とした将来への不安が国民の間に募っている。

 人口減少と少子高齢化に真正面から向き合い、将来世代に責任を持つ政策を基軸に据えれば、野党への期待感につながるのではないか。

 政党政治にダイナミズムをもたらす新たな野党像を模索したい。

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