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独禁法で巨大IT規制 公取委の実行力が課題だ

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 公正取引委員会が「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT(情報技術)企業による個人情報の収集・利用を規制する独占禁止法の運用指針案を公表した。

 プラットフォーマーは検索などのサービスを独占的に提供することを強みに、利用者から膨大な個人情報を吸い上げている。それを広告などに活用し多額の利益をあげてきた。

 指針案は強大な影響力をテコに個人情報を不当に収集・利用する行為を独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」と見なし、排除措置命令や課徴金納付命令の対象になるとした。

 「優越的地位の乱用」は従来、強い立場の大企業が下請け企業に不利益を与えた場合などが対象だった。

 だが、独禁法はもともと、市場の独占で競争が妨げられ、価格設定が不当に割高になることで消費者が不利益を被ることを防ぐのが趣旨だ。

 個人情報は今や「宝の山」と言われるほど経済的な価値を持つ。公取委がプラットフォーマー規制に独禁法適用を広げたことは評価できる。

 プラットフォーマーが個人情報を不正流出させたり、利用者の明確な同意なしに第三者に情報を流したりする問題が続発している。

 最近では、大手就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが就活生のサイト閲覧履歴などから「内定辞退率」を勝手に予測して企業に売っていた。

 指針案で示された「優越的地位の乱用」の例に沿えば、リクナビの件は独禁法違反の可能性がある。

 問題は実効性をあげられるかだ。指針案は「優越的地位」の要件を「容易に代替できるサービスがないこと」とする。ただ、巨大IT企業には規模が違うとはいえ競合事業者がおり、実際の判断は難しそうだ。

 公取委の陣容が840人弱と米当局の半分以下で、ITに精通した人材が少ない点も不安だ。多数の法律家を擁する巨大IT企業に対抗し切れるかは分からない。

 日本はプラットフォーマー規制で出遅れてきた。欧州連合(EU)は昨春施行した一般データ保護規則(GDPR)で個人情報保護を大幅に強化した。政府は来年に予定する個人情報保護法改正も含め、安心できるデジタル社会の実現に向けた包括的なルール作りを急ぐべきだ。

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