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井波律子・評 『国語教師』=ユーディト・W・タシュラー著、浅井晶子・訳

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 (集英社・2160円)

失われた夢を語りの力で甦らせる

 著者のユーディト・W・タシュラー(一九七〇年生まれ)はオーストリアの作家。彼女自身、国語教師だった経験がある。二〇一三年に発表された本書『国語教師』は、二〇一四年度のフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)を受賞した。本書はミステリ仕立ての作品ではあるが、過去から現在に至るまで、登場人物の関係性にスポットを当てながら巧みに展開されており、より広い意味における「小説」だといえよう。

 本書の中心人物は、長らく国語教師を務めるマティルダ・カミンスキと、今は高名な作家であるクサヴァー・ザントの二人である。一九八〇年、ともに二十二歳のとき、ウィーン大学ドイツ語圏文学科の学生だった彼らは知り合い、二年の交際期間を経て、十四年間ウィーンで同棲(どうせい)生活を送った。この間、大学卒業後、念願の国語教師になったマティルダは、学校や生徒に馴染(なじ)み充実した日々を送る一方、作家志望で収入…

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