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中満泉さんから「地球を変えるあなたへ」

(6)広島、長崎の日 一人一人を感じて

リニューアルオープンした原爆資料館に飾られた、原爆投下3日後に撮影された少女の写真=広島市中区で4月25日、山田尚弘撮影

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 この原稿げんこう前日ぜんじつ国連こくれん安全保障理事会あんぜんほしょうりじかいが「ミサイル問題もんだい」をテーマに緊急きんきゅう会合かいごうひらき、わたし突然とつぜん出席しゅっせきして説明せつめいするようもとめられました。とてもむずかしいテーマですし、ニュースにもなりました。翌朝よくあさ出勤しゅっきんすると、同僚どうりょうたちに「大変たいへんだったね」とこえをかけられたほど。

     でもじつは、わたしはこれまで一番いちばん大変たいへんだった仕事しごとは、1989ねん難民高等弁務官なんみんこうとうべんむかん事務所じむしょ(UNHCR)にはいって、はじめての難民なんみん審査しんさだったとおもっています。それは、一人ひとり一人ひとり面接めんせつし、くにからげてきた状況じょうきょうき、国際法こくさいほうらして難民なんみんとしてみとめるのかどうかを判定はんていする仕事しごとでした。わたしくだ決定けっていが、そのひと家族かぞく運命うんめいおおきく左右さゆうするわけで、まだ20だいだったわたしにはとてつもなくおおきな責任せきにんでした。なやんでさい面接めんせつをすることも度々たびたびでした。

     その紛争ふんそうこまっているひとたちへの支援しえん指揮しきしたり、そのために交渉こうしょうしたり、おおきな政策決定せいさくけっていかかわったりしました。いまえらひとがたくさん出席しゅっせきする安保理あんぽりでスピーチすることもあります。しかしまえにいるひと人生じんせい左右さゆうするほど大変たいへんなことはないとおもっています。

     先月せんげつのこのらんで、広島ひろしま原爆げんばく被爆者ひばくしゃ、サーロー節子せつこさんの言葉ことば紹介しょうかいしました。「原爆げんばくくなった一人ひとり一人ひとりが、だれかをあいし、だれかにあいされていたひとでした」という言葉ことばです。この言葉ことばとくわたしこころのこったのは、まえこまっているひと支援しえんする活動かつどうとはちがって、すぐに結果けっかせるわけではない軍縮ぐんしゅく仕事しごとにも、被害者ひがいしゃ一人ひとり一人ひとりこころきざみながらまなければいけない、というメッセージにおもえたからです。

     8がつ広島ひろしまおとずれたとき最近さいきんリニューアルされた広島ひろしま平和へいわ資料館しりょうかん見学けんがくしました。あたらしい展示てんじは、原爆げんばく犠牲ぎせいになった一人ひとり一人ひとりせい焦点しょうてんてたもので、とてもインパクトがあります。最初さいしょはいる「あと少女しょうじょ」のおおきな写真しゃしんは、原爆投下げんばくとうか3にち毎日新聞まいにちしんぶん記者きしゃ撮影さつえいしたそうですが、さくねんになって藤井ふじい幸子さちこさんという女性じょせいだとわかりました。原爆げんばく後遺症こういしょうのがんで1977ねんに42さいくなったという藤井ふじいさん。20だいころうつくしい写真しゃしんが、被爆ひばく直後ちょくご写真しゃしんならんで展示てんじしつ最後さいごかざられています。

     ほかにも、これを家族かぞくとどけてほしいとたくしてくなった15さい木島きじま和雄かずおさんの定期入ていきいれ、3さいくなったしんちゃんの三輪車さんりんしゃなど、犠牲ぎせいになったひとたちをかんじることができました。

    ■「武士道ぶしどう」にまな

     信実しんじつ誠実せいじつちから

     そして今年ことし広島ひろしま長崎ながさき原爆投下げんばくとうかおこなわれる平和へいわ式典しきてん参列さんれつし、グテレス国連事務総長こくれんじむそうちょうのメッセージを代読だいどくしました。メッセージは、事務総長じむそうちょうみずかれ、英語えいごから日本語にほんごやくしてげます。「核兵器かくへいき使用しようふせ唯一ゆいいつ確実かくじつ保証ほしょうは、核兵器かくへいき完全かんぜん廃絶はいぜつである」が共通きょうつうのテーマ。さらに、広島ひろしまでは世界せかいのリーダーたち核軍縮かくぐんしゅく責任せきにんたすことをつよもとめ、長崎ながさきではわかひとたちに核廃絶かくはいぜつ達成たっせいするために世界せかい変革へんかくをもたらす究極きゅうきょくちからであれ、とびかけました。わたしなりに、一言ひとこと一言ひとことこころめてげました。

     もちろん式典しきてんでメッセージを発信はっしんしたところで、核廃絶かくはいぜつ実現じつげんできるわけではありません。なかには、どうしても実現じつげんしたいとねがって一生懸命いっしょうけんめい努力どりょくしても、現実げんじつまえちからおよばず、なかなかできないことがたくさんあります。でも、つね誠実せいじつ努力どりょくかさねていくことが、大切たいせつだとわたしおもっています。

     20だいはじめて日本にっぽんし、その国連こくれん就職しゅうしょくしてずっと海外かいがいらしているわたし愛読書あいどくしょに、新渡戸稲造にとべいなぞう博士はかせ(1862~1933ねん)の「武士道ぶしどう」があります。新渡戸にとべ博士はかせは、国連こくれん前身ぜんしんともえる国際連盟こくさいれんめい事務次長じむじちょうつとめたひとで、国際関係こくさいかんけい悪化あっかしていくなか太平洋たいへいようはしになりたい、とねが努力どりょくしたひとでした。「武士道ぶしどう」のなかに「信実しんじつ正直しょうじきいつわりのないこころ)と誠実せいじつとなくしては、礼儀れいぎ茶番ちゃばんであり芝居しばいである」とあります。どんなに格好かっこういことをったりおこなったりしても、いつわりのない誠実せいじつこころがこもっていなければ意味いみがない、ということです。

     ぎゃくえば、わたしたちみなちいさなことから信実しんじつ誠実せいじつかさねていけば、おおきなちからになるのではないか、とわたしにはおもえるのです。

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