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迫る災害 伝えた一瞬「台風21号 関空大打撃」新聞協会賞受賞

台風21号の被害を伝える紙面

迫る災害 伝えた一瞬「台風21号 関空大打撃」新聞協会賞受賞

 日本新聞協会は4日、2019年度の新聞協会賞を発表した。優れた報道に贈られる編集部門では、昨年9月の関西国際空港の台風被害を撮影した毎日新聞大阪本社写真部、幾島健太郎記者(40)の「台風21号 関空大打撃」(2枚組み写真)など3件が選ばれた。毎日新聞の編集部門での受賞は4年連続31件目で、同部門の最多記録を更新した。

 昨年9月4日に近畿地方を縦断した台風21号では、関西空港の滑走路や駐機場が高潮で冠水。空港沖に停泊していたタンカーが強風で流されて連絡橋に衝突し、鉄道、道路とも不通となったことから利用客や従業員ら約8000人が一夜、空港内に足止めされた。

 幾島記者は台風通過後の4日夕、関西空港の被害状況の空撮のため本社航空部のヘリコプターで離陸。荒天で日没間近という厳しい撮影条件の中、雲の間から西日が差した瞬間を捉え、黒々とした海水に覆われた空港の様子を撮影した。タンカーの衝突現場と合わせ、台風21号の甚大な被害を象徴する写真として、国内外のメディアでも掲載された。

 新聞協会は「雲の隙間(すきま)から西日が差し込んだ一瞬のチャンスを逃さず空港島の様子を捉えたカメラマンの技量と判断力は卓越しており、報道写真の力を内外に示した。自然災害が多発する中、台風被害の甚大さを伝え読者に大きなインパクトを与えた優れた写真報道」と高く評価した。


海水うごめく滑走路 受賞写真

 近畿地方を昨年9月4日に縦断した台風21号で、関西国際空港では最大瞬間風速58.1メートルを記録。空港島周辺では午後2時ごろから潮位が高まり、2本の滑走路のうちA滑走路(3500メートル)のほぼ全域と駐機場、第1ターミナルの地下が浸水した。取材を担当した大阪本社写真部の幾島健太郎記者(40)は航空部の小宮山和秀機長(52)、猪本正道整備士(51)とともに午後5時半ごろ、取材用ヘリコプターに搭乗して大阪(伊丹)空港から関西空港へ向かい、海水に覆われた空港島や連絡橋に衝突したタンカーを撮影した。写真は共同通信社を通じ国内の加盟29社で掲載されたほか、米ニューヨーク・タイムズやCNNなど、欧米、アジアの新聞、テレビ局でも使用された。

滑走路が浸水した関西国際空港=2018年9月4日午後5時55分、本社ヘリから幾島健太郎撮影

関西国際空港と対岸を結ぶ連絡橋に衝突したタンカー=2018年9月4日午後5時57分、本社ヘリから幾島健太郎撮影

災害と写真で向き合う 幾島記者が手記

 滑走路に流れ込んだどす黒い海水が生き物のようにうごめいていた。連絡橋に衝突したタンカーは波浪にあおられて繰り返し船体を打ち付け、破片が海面に飛び散っている。目の前に広がる異様な光景に恐怖を感じながら、「落ち着け」と自分に言い聞かせてシャッターを切った。

 あの日、大阪市内の取材を切り上げ、大阪空港の航空部格納庫に移動して台風が抜けるのを待った。夕方になってようやく視程が回復し、風も収まってきたため航空部のクルーが離陸を決断した。気流が悪く、普段の取材とは比べものにならないくらい揺れ続けるヘリの機内で、何度も天井に頭をぶつけた。

 関西空港は厚い雲に覆われて薄暗く、海水の質感ははっきりしない。しかし、旋回を続けていると一瞬、雲が割れ、逆光気味の西日が差し込んできた。日没ギリギリに訪れた撮影チャンス。「光線、来るぞ」。機内通話用のヘッドセットから小宮山機長の声が聞こえ、撮影しやすい位置と高度に機体を持っていってくれた。

 今回の写真は海外のメディアでも掲載され、地球温暖化の観点から海上空港の危険性を指摘したものもあった。毎年のように起きる集中豪雨や台風、地震など、新聞社のカメラマンとして災害現場に立つことは多い。被災の実態をどう伝えるか。「写真でしか表現できないこと」を意識して、これからも災害報道に向き合っていきたい。