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北海道地震1年 愛猫と共に前へ 崩壊自宅で被災1カ月後、再会 両親が犠牲・44歳女性

出勤前に仮設住宅で愛猫を抱く林崎陽子さん=北海道厚真町で2019年9月6日、貝塚太一撮影

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 地震による土砂崩れで厚真町の自宅が押しつぶされ、同居していた父母を失った林崎陽子さん(44)。失意の中、生きる希望を与えてくれたのが雄の愛猫「フク」の存在だった。人間でいえば60歳くらい。今春から仕事に就いた林崎さんは、「いつまでも泣いてはいられない」と一歩を踏み出す決意をした。

     地震から1年を迎えた6日朝、町内の仮設住宅に住む林崎さんは、両親の遺影に手を合わせた。傍らにそっと寄り添うフク。思わず表情が緩んだ。「フクと一緒に前を向いていきます」。心の中でそう誓った。

     あの日未明、激しい揺れでとび起きた。停電による暗闇の中、ごう音とともに裏山から大量の土砂と木々が押し寄せてきた。2階で寝ていた長兄は無事だったが、1階で一緒だった父清五郎さん(当時87歳)と母タケさん(同83歳)はいくら叫んでも返事が返ってこなかった。

     隣接する苫小牧市から兄2人が駆けつけ、懸命に土を掘った。「母さんの腕だ!」。兄の声がした。触れたかったが、避難を促されて見ることもできず、消防ヘリに乗り込んだ。父と母は折り重なるように倒れていたと聞いた。

     父母は岩手県久慈市出身の開拓2世。父は米や野菜を育てる真面目な兼業農家、母は明るい性格で岩手弁でみんなを笑わせた。もう2人に会えない。とても信じられなかった。

     フクも死んだと思っていた。ところが、地震から1カ月後、土砂が流れ込んだ自宅1階にいるのを見つけた。どこでどうしていたのか。両親の死で何も考えられない状態の中で、救われた思いがした。

     地震の2カ月後、身を寄せていた次兄の自宅から仮設住宅へ移った。寂しさから泣き疲れるまで泣き、体調を崩した。勇気づけてくれたのが、自分の子どものように接してきたフクだった。もともとやんちゃだったのが、地震の後はおとなしくなり、すり寄ったり、甘えたりするようになった。「フクも不安なんだろう」。頼られていると感じ、「フクを守ろう」と決めた。

     仮設住宅の住人たちから「元気かい」と声を掛けられたことも心強かった。「いつまでも泣いてはいられない」。学童保育のスタッフとして、今年4月から働き始めた。

     「フク、帰ってきたよ」。8月下旬の夜、帰宅するとフクが静かに歩み寄ってきた。「今まで周りの人から助けてもらった。自分も誰かの助けになりたい」。1人と1匹の暮らしが始まってから1年近く、林崎さんはそう思えるまで元気を取り戻した。【源馬のぞみ】

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