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北海道地震1年 進む復旧、遠い生活再建 避難先と田畑、往復苦しく

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 北海道で観測史上初めての最大震度7を記録した胆振(いぶり)東部地震は、6日で発生から1年を迎えた。山崩れなどで多くの犠牲者を出した被災自治体は、住民の生活再建を目指した復旧作業に懸命に取り組んでいる。未曽有の全域停電(ブラックアウト)は、酪農や観光など北海道の主要産業にも大打撃を与えたが、対策は進んだのか。現状を報告する。

     ◆最大被災地・厚真

    地震による土砂崩れに巻き込まれた建物=北海道厚真町で2018年9月6日、本社機「希望」から佐々木順一撮影

     災害関連死の1人を含め、37人が犠牲になった最大の被災地・厚真町。山林の山肌が大きく崩れた現場では、命綱をつけた作業員の男性が、汗だくになりながら崩落防止用のネットを設置していた。そのわきを、土砂や倒木を積んだ大型車両が徐行運転で行き来していた。

     山崩れでつぶされた家屋のほとんどは撤去されたが、山あいを縫うように延びる道路の一部は堆積(たいせき)した大量の土砂に覆われ、寸断されたままだ。点在する集落を結ぶための迂回(うかい)路があちこちに新設された。

    復旧工事が進んでいる現場=北海道厚真町で8月26日、本社機「希望」から藤井達也撮影

     震源地の胆振東部地方は、有数の米どころとして知られる。北海道を代表する高品質米・ななつぼしを、地名にちなんで「たんとうまい(胆東米)」のブランドで売り出してきた。

     今年は生育期の天候が良く、さらにおいしい米が期待できるといい、水田は青々とした稲が風に揺れていた。農業用水路を復旧させ、田植えに間に合わせた男性は「うまい米を作り、応援に応えたい」と力を込めた。復旧が進んではいるが、作付面積(約1500ヘクタール)の約1割は依然、土砂の下に埋もれたままだ。

     震度6強を記録したむかわ、安平両町を含め、応急仮設住宅で生活する3町の被災者は201世帯415人(8月時点)。被災農家の中には、田畑がある自宅と仮設住宅の行き来を強いられている人が少なくない。

     厚真町の仮設住宅で母と暮らす50代の女性は、朝早くからの作業が欠かせない野菜などを育てているため、朝4時には畑に向かう。温度管理が必要なメロンも栽培しており、夫は自宅の横に設けたトレーラーハウスで暮らす日々だ。生活拠点が分かれたため、光熱費を二重に払っている被災者もいる。

     厚真町の被害は北東部に集中し、林業の被害は3236ヘクタール、約436億5600万円に上った。地震による山林などの崩壊面積は明治以降で最大という。上空から一望すると、復旧工事が進んでいるのは道路や住宅地周辺のみで、山深い山間部は発生直後とあまり変わらず、手つかずの状態だとわかる。仮設住宅の入居期限は来年12月。生活再建に向けた道のりは険しい。

     ◆ブラックアウト対策

    電力、本州との融通強化 老朽化施設延命、安定供給を優先

     ブラックアウトの発生は、大規模発電所に依存する電力供給体制の危うさを露呈した。北海道電力は地震後、老朽化した発電所の廃止を延期するなど、安定供給策を優先することで「ブラックアウトのリスクは極小化している」と説明する。

     突然の大きな揺れの後、北海道最大の火力発電所・苫東厚真(とまとうあつま)(165万キロワット)が停止した。送電線の事故も発生し、道東の水力発電所が止まった。

     供給不足に陥り、北電は一部地域を強制的に停電させたが、電力の需給バランスは戻らず、正常に運転していた他の発電所も、周波数の低下による設備故障を防止するため次々と自動停止。「闇」が全道に広がった。

     地震発生前の道内電力需要は308・7万キロワットだった。電力供給の約4割を担っていた泊原子力発電所(207万キロワット)は、東京電力福島第1原発事故の後に強化された安全審査で再稼働できておらず、需要の約半分を苫東厚真に頼っていたことがあだとなった。

     北電は地震後、道東の送電設備を補強するなど非常時の故障を防ぐ対策を施した。更に、老朽化を理由に今年2月に廃止予定だった音別火力発電所(14・8万キロワット)の運転延長を決めた。また、同社初の液化天然ガス(LNG)を使った石狩湾新港火力発電所(56・94万キロワット)が営業運転を始めた。

     緊急時に本州側と電力を融通する従来の北本(きたほん)連系線(送電容量60万キロワット)に加え、新北本連系線(同30万キロワット)の運用も始まった。政府は北海道―本州間の送電容量を更に30万キロワット増強し、計120万キロワットにする方針を決定した。

     一方、北海道は広大な土地に恵まれ、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー(再エネ)の導入が進められてきた。北電によると、道内の太陽光と風力の出力は計198万キロワット(3月末現在)で、道内の平均電力需要(約350万キロワット)の6割に迫る。

     ただ、再エネの発電量は気候条件に左右される。しかも、再エネ電力の供給が過剰になると、需給バランスが崩れる恐れもある。地震とは逆の要因で、大規模停電を招きかねないというのだ。

     北電は7月、再エネ発電事業者に「出力制御」の準備を要請した。「直ちに出力制御が必要となる状況ではない」とするが、札幌市の太陽光発電企業の担当者は「出力制御に応じても無補償。経営上の不安材料になる」と漏らす。

    昨年度の観光客、最多記録 外国人可のふっこう割奏功

     ブラックアウトでネオンや街灯が消えた札幌の歓楽街、ススキノ。震災のあった昨年9月に札幌市を訪れた観光客は、前年同月比で約14%(約23万人)減少し、道内を訪れた外国人は、札幌入国管理局によると、約24%(約2万8000人)も減った。

     ただ、2カ月後の昨年11月に入ると、札幌市を訪れた観光客は前年を上回るまでに回復した。昨年度は結局、前年度から約57万人増の約1584万人となり、4年連続で過去最多を記録した。

     大きな要因は、道内の宿泊付き旅行を対象にした割引制度「北海道ふっこう割」。観光需要の早期回復を図ろうと、道が18年10月から19年3月に行い、地震による宿泊キャンセル数(約115万人)を大きく上回る約178万人が訪れた。

     大手旅行会社「JTB」によると、ふっこう割の商品は即完売状態だった。外国人観光客も利用でき、昨年12月以降は常に前年を上回る入国者を記録した。

     ◆札幌の住宅街

    目立つ傾いたままの建物

    札幌市清田区で道路に亀裂が入り、押し寄せた泥に覆われた住宅地=2018年9月6日、土谷純一撮影

     札幌市清田区里塚地区の住宅街では、液状化による大規模な土砂流出で地面が陥没し、住宅約300棟が被災した。全壊や大規模半壊と判定された住宅を中心に解体作業が行われているが、傾いたままの建物が目立ち、手つかずの区域も多い。

    舗装された道路を地元の小学生が家に向かっていた。周辺は建物がいまだ傾いたままだった=8月21日、竹内幹撮影

     市によると、みなし仮設住宅(国の制度)と市営住宅(市の提供)で暮らしているのは里塚地区の計47世帯(8月現在)に上る。入居期間はともに2年間の予定だが、元の家に住める保証はない。市は住民に聞き取り調査を実施し、仮設住宅の設置期間延長を含め、今後の方針を決めるという。

     札幌市は例年、10月末ごろに初雪を観測する。今年度中に地盤改良工事を終え、来年度から宅地の復旧に移行予定だが、雪が積もる冬は工事が滞るため、住民には不安が広がる。


     この特集は、福島英博、源馬のぞみ、岸川弘明、山下智恵、土谷純一、真貝恒平が担当しました。

    編集・レイアウト 倉沢真一郎 グラフィック 松本隆之

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