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社説

「長崎新幹線」の迷走 佐賀の主張は理解できる

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 佐賀県の怒りは無理もない。九州新幹線・長崎ルートを巡る計画が当初同意した内容と大きく変わってしまったのである。JR九州の博多駅と長崎駅を結ぶ整備新幹線だ。

 「地元の県が求めていないのに、フル規格で整備すると中央が押し付けるやり方は、地方自治の観点から大きな問題だ」。山口祥義・佐賀県知事の主張は理解できる。

 もともと佐賀県には魅力の乏しい計画だった。

 例えば、今でも佐賀―博多の所要時間は特急で40分足らずだ。新幹線が開通しても、顕著な時間短縮効果は見込めない。長崎―博多が最速で51分と、半分になるのとは対照的だ。一方、佐賀県内の工事区間は長崎県より長く、費用は余計にかかる。

 新幹線と並んで走る在来線がJRから経営分離されると、利用者の利便性は逆に悪化し、在来線利用で県内を訪れる人の足も遠ざけてしまいかねない。地方経済の活性化を妨げる心配さえある。

 こうした事情から、新鳥栖―武雄温泉区間は、在来線ルートを活用する方針がとられた。

 ところがフル規格と呼ばれる通常の新幹線と在来線では、2本のレールの幅が違う。新幹線の車両がそのまま在来線に乗り入れることはできない。そこで、車輪をスライドさせて、狭軌の在来線も走ることのできる新型車両、フリーゲージトレインを開発・導入する方向となった。

 しかし、技術開発が間に合わず、新幹線への導入を政府は断念した。

 そうした経緯の末、与党の検討委員会が先月、全区間を割高なフル規格とする意見をまとめたのだ。

 長崎県で完全フル規格への期待が大きいことも、すでに長崎―武雄温泉間でフル規格の工事が進行している事実も、もちろん軽視できない。

 しかし、甘い見通しでフリーゲージ採用に踏み出した判断やその責任の所在を含め、計画の経緯を検証することが先である。

 フル規格での整備に向けた環境影響評価の費用を国土交通省は来年度予算の概算要求に含めなかった。しかしフル規格化を撤回したわけではないだろう。

 国民の税金を使う大事業だ。2県だけの問題ではない。検証した上で、一から検討し直した方がよい。

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