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かねて地滑りや液状化の危険が指摘されてきた「大規模盛り土造成地」の実態調査が進んでいない。
多くは高度経済成長期を中心とした都市部への人口流入に伴う宅地造成ラッシュで生まれた。都市近郊の谷や丘などの斜面に土を盛る方法で造成され、中には地震の揺れや大雨で崩れやすい場所もあるとされる。
国は2006年、こうした造成地の分布マップの作製・公表を自治体に要請した。地盤調査で危険箇所を特定し、必要なら対策工事をすることも求めた。
しかし、自治体の動きは鈍い。
国土交通省の調査によると、今年3月末時点で、全国1741市区町村のうちマップを公表していると回答したのは586市区町村にとどまる。しかも地盤調査も完了しているのはわずか26市町村だ。
全体のうち473市町村は、こうした造成地があるかないかすら明らかにしていない。
マップを公表した自治体を対象にした毎日新聞の取材では、大規模盛り土造成地は全国で少なくとも約3万カ所に上る。
1年前の北海道地震で被災した札幌市清田区里塚地区もこうした造成地だ。1970年代、谷に盛り土をして造られたが、昨年の地震でこの埋め立て部分が液状化して地盤沈下が起き、多くの家が傾いた。
遠くない将来には、南海トラフ地震や首都直下地震の発生が高い確率で予測されているだけに、調査の遅れは深刻だ。
大きな課題となっているのは、財源の確保と住民の理解を得ることの難しさだという。
住民は「危険な土地」と見られることで資産価値が下がるのを心配する。対策工事が必要となった場合、国の補助率は4分の1にとどまる。残りの費用は原則として自治体と住民が負担することになっており、これに反発する住民もいる。
国は4月から、マップの作製にも着手できていない自治体については作業の肩代わりを始めた。
自治体も実態調査を着実に進めていくべきだ。
自分の住む場所にどんな危険があるかは、住民が自分の身を守るために重要な情報でもある。粘り強く住民の理解を得るしかない。