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内田麻理香・評 『ナチ 本の略奪』=アンデシュ・リデル著、北條文緒・小林祐子・訳

 (国書刊行会・3456円)

第三帝国支える思想の創出目指す

 ナチが美術品を略奪した悪業は、映画化もされており、知る人も少なくないだろう。しかし、ナチは美術品だけではなく、膨大な本や資料も奪っていた。本書は、美術品に比べて注目されにくい、ナチの組織的な本の略奪の詳細に迫り、その意図を白日の下にさらす。

 ヒトラーが首相に就任したのが一九三三年一月。同年の五月、ベルリンでは大規模な焚書(ふんしょ)が行われた。ユダヤ人や共産主義者の著作は「汚らわしい本」として火中に投じられた。ナチは、一九三三年以前から文化的イベントを妨害しており、「不快」な映画や「堕落した」芸術の展覧会を攻撃の対象としてきた。五月の焚書の火付け役は、ナチではなく学生連盟だったことに留意したい。焚書は各地で行われ、学生、教師、学長らが演説をし、大群衆を引き寄せた。当時の知識人たちは、この焚書を馬鹿(ばか)げた騒ぎにすぎないとあしらっていたが、この楽観的な見通しは外れることになる。

 焚書には、ナチが反知性的な文化破壊者というイメージがつきまとう。しかし、ナチがヨーロッパ中の図書館や古文書館から本を略奪したのは、「敵」の文芸文化やことばを滅ぼすためではなく、「敵」の持つことばを研究するためであった。そして、ナチの視点から世界史を書き換え、第三帝国を支える思想を創出することが目的だったのである。

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