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余録

きのう朝、首都圏では一夜のうちに…

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 きのう朝、首都圏では一夜のうちに散乱した木の枝や葉が、見慣れない光景を作り出していた。「野分(のわき)のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ」。台風の翌日の荒れた風情をおもしろがっていた枕草子だ▲だが筆者の清少納言(せいしょうなごん)が生きていた当時、京の都はすさまじい台風被害を経験している。989(永祚(えいそ)元)年に御所の建物や門、民家や寺社もことごとく倒壊させ、「死亡損害 天下大災 古今無比(ここんむひ)」という「永祚の風」のことである▲この時、比叡山では大鐘が吹き飛び、七つの僧坊を破壊しながら谷底に落ちた。都を襲った「永祚の風」はその後、大災害の代名詞になったという。だから清少納言も台風の恐ろしさや悲惨な被害を知らなかったわけではないだろう▲千葉市中央区の最大瞬間風速57・5メートルはじめ、4都県15地点で観測史上最大風速を更新したという台風15号だった。関東への上陸は3年ぶり、首都圏を直撃した台風としては過去最強クラスというから「令和の風」と呼ばれかねない▲倒れたゴルフ練習場の支柱が民家を切り裂いた映像にはぞっとする。送電線の鉄塔が倒れたりして、1都6県の約90万戸が停電した。鉄道各社は始発からの計画運休を前日に決めたが、運転再開が遅れて大混乱を招いたところもある▲台風一過の猛暑に停電でエアコンが使えぬお年寄りもいれば、長い行列と超満員電車にくたくたの通勤・通学を強いられた人たちもいた。心にしみる風情には縁遠い令和元年の「野分のまたの日」である。

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