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飛行差し止め認めず 賠償261億円に減額 第3次嘉手納爆音訴訟 高裁那覇支部判決

第3次嘉手納爆音訴訟の控訴審判決後の記者会見で「司法の信用は地に落ちた」と判決を批判する原告弁護団の神谷誠人弁護士(右端)=那覇市で2019年9月11日午後3時52分、遠藤孝康撮影

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 米軍嘉手納(かでな)基地(沖縄県嘉手納町など)の周辺住民2万2034人が夜間・早朝の米軍機の飛行差し止めと騒音被害に対する損害賠償などを国に求めた「第3次嘉手納爆音訴訟」の控訴審判決が11日、福岡高裁那覇支部であった。大久保正道裁判長は、国に総額約302億円の支払いを命じた1審・那覇地裁沖縄支部判決(2017年2月)を変更し、原告2万2020人への総額約261億2577万円の支払いを命じた。賠償の認定基準額を1審から減額し、飛行差し止め請求は1審と同様に退けた。住民側は上告する方針。

     損害賠償の認定基準額は3次訴訟の1審判決で大きく引き上げられていたが、判決は今回引き下げた理由について明示しなかった。

     住民側と国側の双方が控訴していた。判決は米軍機の飛行の差し止め請求を「基地の管理・運営権は米国に委ねられ、国は米軍機の運航を規制、制限できる立場にない」とし、これまでの同種訴訟と同様に「第三者行為論」によって棄却した。

     そのうえで「米軍の活動によって国民全体が利益を受ける一方、基地周辺の住民に特別の犠牲が強いられており、看過できない不公平が存在する」と指摘。騒音の程度を示す「W値(うるささ指数)」が75以上の地域に暮らす原告について「会話や電話など日常生活のさまざまな面での妨害や精神的苦痛が生じている」と損害を認定し、「社会生活上、受忍すべき限度を超えている」と賠償を命じた。

     一方、1審判決が認めた「騒音による高血圧症発生のリスクの増大」については「血圧上昇への不安感」との認定にとどめた。慰謝料の認定基準額(月額)もW値95以上で2万2500円、90以上で1万8000円などとし、1審判決(W値95以上で3万5000円、90以上で2万5000円など)の約6~7割に引き下げた。

     W値75未満の地域に住む原告らの請求や将来分の騒音被害についての請求は退けた。また、米政府を相手取った飛行差し止め請求は不適法として却下した1審判決を支持し、原告側控訴を棄却した。

     米軍基地の騒音を巡る訴訟では、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の周辺住民約3400人が起こした「第2次普天間爆音訴訟」の控訴審判決(今年4月)でも損害賠償の認定基準額が引き下げられた。【遠藤孝康】

    玉城・沖縄知事「負担軽減粘り強く働きかける」

     米軍機の飛行差し止めを認めなかった第3次嘉手納爆音訴訟の控訴審判決について、沖縄県の玉城(たまき)デニー知事は11日、「嘉手納基地を巡っては外来機の度重なる飛来など負担軽減と逆行する状況がある。県としては今後とも、騒音をはじめとした負担軽減を日米両政府に粘り強く働きかける」とのコメントを出した。

    ことば「米軍嘉手納基地」

     沖縄本島中部の嘉手納町、北谷(ちゃたん)町、沖縄市にまたがる極東最大規模の米空軍基地。太平洋戦争末期に旧日本軍が造成した飛行場を米軍が占領して整備拡張した。面積は約1990ヘクタールで、隣接する弾薬庫地区約2660ヘクタールと合わせると東京ドーム989個分に相当する。長さ3690メートルの滑走路が2本あり、騒音の激しいF15戦闘機など約100機が常駐。国内外の米軍基地から外来機も飛来する。2018年度の離着陸回数は4万9509回で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の3倍に上る。

    「常に戦場にいるような爆音」「国を忖度」原告ら憤りの声

    第3次嘉手納爆音訴訟の控訴審判決後の記者会見で「私たちの願いからほど遠い判決だ」と憤る新川秀清・原告団長(前列左)=那覇市で2019年9月11日午後3時35分、遠藤孝康撮影

     米軍嘉手納基地(沖縄県)を巡る第3次爆音訴訟の控訴審判決は、米軍機の飛行差し止めをまたも認めず、賠償の基準額も減額した。1982年の1次訴訟の提訴から37年となるが、早朝・深夜までの米軍機の飛行が繰り返され、騒音は改善されないまま。「静かな夜を返せ」という願いはかなわず、原告らは憤りの声を上げた。

     午後2時過ぎ、裁判所から出てきた弁護士が「差し止めまたも認めず」などと書かれた紙を掲げると、集まった原告らからため息が漏れた。嘉手納基地の滑走路の延長線上の地区で自治会長を務めるうるま市の仲宗根(なかそね)洋子さん(63)は、深夜の米軍機の飛行によって睡眠妨害を受けているといい、「常に戦場にいるような爆音の状況を裁判所は理解していない」と憤った。

     判決後に那覇市であった記者会見で、池宮城紀夫(いけみやぎとしお)・弁護団長は「国は米軍機の運航を規制できる立場にない」として飛行差し止めを認めなかった判決を批判。「NATO(北大西洋条約機構)諸国は米軍の違法行為を規制している中、なぜ日本だけ規制できないのか」と指弾した。賠償の認定基準額を減額した点についても「1審並みの額を認めると全国の同種訴訟に波及し、国が財政的に厳しくなると忖度(そんたく)をしたのでは」と皮肉った。

     嘉手納爆音訴訟の原告は1次訴訟提訴時の約900人から3次では約24倍の約2万2000人にまで増えた。米軍基地の騒音を巡る同種訴訟で全国最多の原告数で、新川秀清・原告団長は「基地負担が軽減されず、静かな夜が戻らない不条理への住民の怒りだ。騒音被害を根本的に止めようとしない政府や、判断を逃げる司法への怒りが沖縄中に広がっている」と訴えた。【宮城裕也】

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