(早川書房・2808円)
爆笑と落涙、哀しみとすがしさ。「ピュリッツァー賞を喜劇的な小説が受賞するのは数年ぶり」の快挙とのこと。確かにこのところ、現在の危機的な世相を反映して、米国の起源を問い、戦争などを扱う小説が目立った。
『レス』は個人的な物語だ。主人公は、アーサー・レスというゲイの男性小説家。四十歳から九年間つきあった年下の恋人がべつの相手と同性婚することになり、結婚式への招待状が届く。それには絶対に出席したくないし、五十歳を目前にした動揺からも目をそむけたいので、世界一周旅行を計画する。
彼には、川端康成を想起させるという『暗黒物質(ダークマター)』なる注目作や、外国でナゾの文学賞を受ける(本国では黙殺されたが、「天才詩人」による「超訳」によって傑作に生まれ変わったらしい)『宇宙飛行士としての芸術家の肖像』なるジョイス張りの迷作もあり、全く売れていなくはない。しかしメガヒットを放つSF作家のインタビューをやらされたり、「アーサー・レスと過ごす一夜」というイベントに客が誰もこなかっ…
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