連載

私だけの東京・2020に語り継ぐ

著名人へのインタビューを通じて、東京の魅力を再発見します。

連載一覧

私だけの東京・2020に語り継ぐ

作家 綿矢りささん 村上ワールドに入り込む

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 もともと京都に生まれ、高校までは地元で暮らしていたのですが、早稲田大学進学を機に東京に住むようになりました。下宿先は大学の学生生活課に紹介してもらった物件で、大学の近くで。当時読んでいた村上春樹さんの「ノルウェイの森」にモデルとして出てくる寮が偶然近くて、それがうれしかったです。

 私の下宿先は「胸突坂(むなつきざか)」というすごく急な坂を上った辺りにありました。切り立った斜面に沿って細い階段が続き、横には古い塀があり、見上げると木々の緑が茂る。春夏秋冬が楽しめるような趣のある坂だったんですね。通学するにも、電動ではない自転車で上り下りしなければいけませんでした。

 大学は昔ながらの建物や気質が当時でも残っていて、自分を含め学生たちは若いのに、学内はタイムスリップして昭和の風情が漂っているような、不思議な空間でしたね。学生講堂の前でフォークギターで弾き語りしている子とか、警備員の目を盗んで学内で何日も寝泊まりする子とかもいた。冬でもげたを履いた男の子の角質が硬くなったかかとを見ていると、何だか懐かしい気持ちになりました。

この記事は有料記事です。

残り1316文字(全文1782文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集