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15歳のニュース 北方領土 ロシア化の現実 中高生ら国後島で交流

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 「北方領土」について、あなたはどんなイメージを持っているだろうか? 「遠い」「寒い」「日本の北端(ほくたん)」、もしかしたら「ちょっと怖(こわ)い」……? 全国から集まった中高生や教員が今月、北方領土の一つ、国後島(くなしりとう)を訪れた。そこには「ロシア化」の厳しい現実と、友好的な島民の姿があった。【斎藤(さいとう)広子(ひろこ)】

 国後島は沖縄本島より少し広い。北海道の北東、知床(しれとこ)半島と根室(ねむろ)半島に抱(いだ)かれるように位置している。試(ため)しに手近な日本地図を見てほしい。山の名前くらいしか書かれていないのでは。詳(くわ)しいデータがほとんどないのだ。日本の領土のはずなのに、なぜ?

 国後島をはじめとする北方領土の四島には終戦まで日本人が住んでいた。戦後は74年間にわたり、ロシアが実効支配している。返還(へんかん)を求める日本政府とロシア政府の話し合いは進んでおらず、日本人は住むどころか、自由に行き来もできない。

 四島に行くわずかな手段の一つが「ビザなし交流」だ。日本人と4島に住むロシア人とが交流するための特別な制度で、1992年から始まった。中高生18人は今回この制度で、9月7日から10日まで、国後島に渡航(とこう)した。

 北海道の根室港から船で4時間あまり。国後島の中心地・古釜布(ふるかまっぷ)には、色とりどりの屋根が並び、看板も落書きもロシア語の文字だ。商店にも日本の商品はほとんどなく、日本人が住んでいたという名残は、墓地にしかなかった。

ロシア人の友達できた

 全日程にわたり、島民たちは温かく日本の訪問団を迎(むか)えた。現地の家庭を少人数に分かれて訪問する「ホームビジット」では、15家庭が日本人を受け入れ、食べきれないほどの料理でもてなした。学校の体育館で行われた子どもたちの交流会では、日本人もロシア人も、「いす取りゲーム」や「ハンカチ落とし」で一緒(いっしょ)に盛り上がった。

「絶対返還」単純じゃない

 沖縄県の中学2年、津嘉山(つかやま)理子(りこ)さんは「行く前は『絶対に返還(へんかん)』と思っていた。でも私が訪ねた家庭では、この島を気に入って3世代で暮らしていた。そういう人たちを島から引(ひ)き離(はな)すことはできない。単純ではないとわかった」と話した。また北海道の高校2年、川谷(かわたに)遥紀(はるき)さんは「仲良くなった男の子から、『領土問題についてキミの考えを聞かせて』と言われた。向き合って、自分の考えを伝える大切さを感じた」と語った。

自由に行き来できるように

 北海道の中学3年、本間(ほんま)結衣(ゆい)さんは根室への帰り際、見送りにきたロシア人の女の子と抱(だ)き合(あ)って涙(なみだ)を流した。「地元の羅臼(らうす)からは国後島が見えるので、毎日彼女(かのじょ)を思い出すと思う。早く自由に行き来ができるようになってほしい」と話していた。

元島民、平均年齢84歳に

 四島には終戦時、1万7000人の住民がいた。「いずれは島に帰る」と信じ続けた元島民の多くは他界し、残る約6000人弱の平均年齢(ねんれい)は84歳(さい)に達している。

 今回、北海道羅臼町(らうすちょう)に住む元島民2世の鈴木日出男(すずきひでお)さん(67)も「語り部」として国後島を訪問した。戦前、鈴木さんの両親と姉4人は国後島で生まれ育った。1945年9月、旧ソ連(現在のロシアなど)の兵士たちが島に上陸を始め、家族は着の身着のまま、対岸の羅臼町に逃(に)げた。その後、両親は一度も国後島の土を踏(ふ)めないまま亡(な)くなった。

 かつて家族が住んでいた国後島の瀬石(せせき)地区には現在ロシア軍の施設(しせつ)が置かれ、鈴木さんが訪ねていくことはできないという。先祖の墓参りもできていない。「今住んでいるロシア人には何の罪もないことはわかっている。しかし、やはり島を返してほしいという思いは変わらない。今回の訪問で、一緒(いっしょ)に行った若い世代の人たちに、両親の経験や、自分の思いを伝えることができてよかった」と話していた。


 ■KEY WORDS

 【北方領土(ほっぽうりょうど)】

 北海道の北東に位置する歯舞群島(はぼまいぐんとう)、色丹島(しこたんとう)、国後島(くなしりとう)、択捉島(えとろふとう)の四つの島のこと。最も大きな択捉島は面積が3184平方キロで鳥取県とほぼ同じ。歯舞群島は小さな島々からなっている。四島には1945年まで日本人が住んでいたが、現在はロシアが実効支配している。日本人は1948年までに送還(そうかん)されてしまい、誰(だれ)も住んでいない。

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