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中村桂子・評 『レンマ学』=中沢新一・著

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 (講談社・2916円)

二十一世紀の科学へ刺激的な提言

 正直、まず「レンマ」って何というところから始まった。読み進むうちに、『華厳経』と関係があるとわかってくる。こりゃ難しそうだというのが本音だが、それでも取りあげたのには理由がある。

 人間は生きものであるというあたりまえのことを基本に、自然・生命・人間の理解を求める研究の場に身を置く者として、今の学問に何か不足を感じている。近年、ゲノムはもちろん、プロテオーム、メタボロームなど、私たちの体をつくり、またそこではたらく物質については大量のデータが得られている。脳研究も急速に進み、人工知能は日々発達している。しかし、ここから人間とは何かが見えてくるのは難しそうだ。むしろ、人工知能に押され、学問の中では人間の人間らしさが消え機械化していきそうな気配さえ見える。

 生きものである人間を知る学問が欲しい。強く思うようになっているところへ、「未来のサピエンス学へ」とある本書の登場である。ヨーロッパで発達した「学」は「ロゴス」に依拠している。ロゴスは、「自分の前に集められた事物を並べて整理する」知性作用であり、言葉がこれと同じ作用をもつので、言葉で考え表現できる。一方「レンマ」は「全体をまるごと直観によって把握する」知性であり、データ化や言葉化が難しく、その働き…

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