- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
(岩波新書・929円)
無用の軍備が招いた悪循環
ハリウッドの影響だろうか、第二次世界大戦に関しては、欧州の西部戦線と太平洋戦争、すなわち米国の主戦場だった二方面ばかりが語られがちだ。だが実際の犠牲者数は、日中戦争と独ソ戦の方がはるかに大きい。そしてその両者とも、米国が真珠湾攻撃を受けて参戦した1941年12月の時点で、十全に泥沼化していたのである。
筆者が独ソ戦の凄(すさ)まじさに初めて気付いたのは、2014年の夏、モルドバ共和国の首都キシニョフに立ち寄った時だった。大戦終盤のヤッシー・キシニョフ攻勢で主戦場となったこの町には、およそ歴史的建造物というものが残っていない。この戦闘の両軍の死者は、硫黄島での日米軍の死者の10倍以上の、33万人だったという。
この記事は有料記事です。
残り1109文字(全文1441文字)