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詩の橋を渡って

気配を待つ言葉たち=和合亮一(詩人)

 <わたしたちはエベレストに登れません

 わたしたちはただの言葉です>

近づくものたちの声は

そのように聞こえるかもしれない

 秋の実りへと向かっている。日々の風景の変わりゆく瞬きを鋭く思わせてくれたのが、渡辺めぐみの新詩集『昼の岸』(思潮社)である。言葉の一つ一つが時や命を刻むかのように丹念に綴(つづ)られていて、この書き手の静かで深い呼吸のゆるぎなさを詩の運びへともたらしている印象がある。季節のきめ細かな肌合いの変化の中にかけがえのない時を過ごしていることを丁寧に味わわせてくれる一冊である。

 「窓から近づいて来るものがある/沢山(たくさん)の黄ばんだ書籍と新しい書籍が/その気配を待っている/ぴったりと身を寄せ合って」。出したままの本にあふれている私の書斎の机の上に似ている感じだ。続くこの鮮やかな詩行に惹(ひ)かれた。「<わたしたちはエベレストに登れません/わたしたちはただの言葉です>/近づくものたちの声は/そのように聞こえるかもしれない」。視点が高みへと誘われて、どきりとさせられた。

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