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日本語交流活動「木ひる」 市民が支える多文化共生=山野上隆史 /大阪

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とよなか国際交流センターの「木ひる」の様子。ボランティアを囲むインドネシアの若者たち=山野上隆史さん提供 拡大
とよなか国際交流センターの「木ひる」の様子。ボランティアを囲むインドネシアの若者たち=山野上隆史さん提供

 外国人が日本に来て直面する困難の一つが言葉の壁だ。

 とよなか国際交流協会では1993年の設立当初から、豊中市のとよなか国際交流センターで日本語教室を行っていた。市販のテキストで3カ月間学び、修了後は日本語を使って地域で活躍してもらうことを期待していた。

 ところが、数年後、学習者アンケートを通して外国人の置かれている状況を知る。「あなたは学んだ日本語をどこで使いますか」という質問に対して「ここ(=教室)です」「センターです」という答えが一番多かった。日本語を学んでも、地域とつながっていなければ使える場所も相手もいない。壁以前に孤立していたのだ。

 そこで教室形式ではなく、多くの市民が日本語を教えるボランティアとして参加し、コミュニティーを創り出す「日本語交流活動」が週3回、99年に始まった。そのうち毎週木曜日の午後に行われるのが「木(もく)ひる」だ。

 参加するのは子育て中の母親、飲食店で働く料理人や工場で働く技能実習生、留学生や研究者とその家族など。時折、高校や大学進学を目指す10代後半の若者も来る。韓国、中国、ベトナム、インドネシア、インド、ネパールなど出身もさまざまだ。

 一方、ボランティアの参加動機も「自分が外国にいたときにいろいろ助けられた。今度は自分が役に立ちたい」「子育てが落ち着き、自分にやれることを探していた」「日本語教師だが、その経験を生かしたい」――など多様であり、年代も幅広い。

 木ひるは日本語のレベルや目的(読み、書き、会話など)別に小グループに分かれて活動を進めるが、途中にお茶の時間を設け、出会いと交流が広がるようにしている。季節ごとに発行する交流誌「木ひるちょっとほっと」では、参加者の自己紹介のほか、「夏の過ごし方」「昨日の晩ご飯」などのテーマを掲げ、みんなのコメントを載せたりする。日本語が難しい学習者は原稿を母語で書くこともある。自己表現の貴重な機会だ。

 「自分の声を聞いてくれる」。外国人にとっては交流活動を通して日本語を学習し、地域情報が得られるほか、気軽に話し、相談できる関係が生まれる。ボランティアにとっても外国人の暮らしや課題について知り、多様な価値観と出会う場になっている。

 外国人が置かれた現状への「気付き」とともに、日本語交流活動は広がっている。外国人労働者向けに日曜朝も開催日に加えた。リーマン・ショック後、「日本語ができないので仕事がない」という相談に応える活動を月曜午前に開始した。センターが遠くて通えない人のために、千里地域でも公民館、図書館と協働で開いている。さらに、市民による自主グループの活動が火曜夜、金曜夜、土曜朝、日曜昼に開かれる。

 現在、日本語交流活動全体でボランティアは150人を超える。外国人と地域住民のつながりの広がりはセーフティーネットの広がりでもある。外国人労働者を受け入れる多文化共生の地域づくりは、人のつながりを広げ、お互いに言葉の壁、心の壁を低くしていくことが重要で、市民の取り組みが不可欠だ。


 地域の活性化や多文化共生に取り組む市民が執筆します。次回は10月18日掲載予定。


 ■人物略歴

やまのうえ・たかし

 公益財団法人とよなか国際交流協会理事兼事務局長。1977年、大阪生まれ、神戸育ち。高校生の時、阪神大震災を経験。主な共著に「外国人と共生する地域づくり 大阪・豊中の実践から見えてきたもの」(明石書店)。

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