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社説

建国70年を迎えた中国 国際秩序と共存する道を

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 国民党との内戦に勝利した中国共産党の毛沢東主席が北京の天安門で中華人民共和国の建国を宣言してから70年。ナポレオンの「予言」どおり、「眠れる獅子」が覚醒し、世界を「震撼(しんかん)」させている。

     強大化した中国に世界は戸惑い、警戒感が高まっている。米中貿易戦争や長期化する香港のデモもその表れだ。国際秩序を破壊するのか。それとも共存を図るのか。中国の姿勢が問われている。

     中国の国内総生産(GDP)は建国初期と比べ170倍以上に増え、平均寿命も35歳から77歳へと倍以上に延びたとされる。最貧国の一つだった中国が「世界の工場」と呼ばれるまでに発展を遂げたことは人類史上も特筆されるべきことだろう。

     単純な道のりではなかった。1950年代後半から70年代にかけては無謀な「大躍進」政策で数多くの餓死者を出し、その後の文化大革命の混乱でも多くの犠牲者を生んだ。

    デジタル独裁のモデル

     毛主席の死後に権力を握った鄧小平氏はその反省に立ち、社会主義的な計画経済と決別し、市場原理を導入して改革・開放政策を進めた。

     日米などとの良好な関係を背景に

    外資導入による輸出主導型の発展に成功し、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟後はさらにグローバル化の恩恵を受けた。

     一方で1840年のアヘン戦争以降、欧米列強や日本に国土を侵略された歴史を「恥辱」と考える共産党政権は軍事力増強に力を注いだ。

     突出した資金力、技術力で本土から遠く離れた南シナ海に巨大な人工島を造成したことは中国の脅威を顕在化させた。経済が低迷し、軍事力の負担に耐えきれずに崩壊に至った旧ソ連とは異なる、新たなタイプの軍事大国の誕生ともいえる。

     13年以降、習近平国家主席の下で大国を意識した外交路線が進められたことも各国の警戒心を高めた。大国化した中国が関心を世界に広げるのは当然だ。広域経済圏構想「一帯一路」を歓迎する国も少なくはない。しかし、スリランカのように債務が返済できず、港湾運営権を中国企業に渡す国が出たことで、覇権拡大の手段という疑念が高まった。

     習政権の建国後の歴史認識にも疑問符がつく。文革を否定した鄧氏と違い、習氏は70年を連続した歴史ととらえる傾向が強い。文革期には人権が無視され、チベットやウイグル族など少数民族も弾圧された。その過去を否定しないままでは現在の政策への信頼も得られまい。

     中国は科学技術政策に巨費を投じて情報革命の波に乗り、次世代通信規格5Gや人工知能(AI)の分野でも世界トップ級の技術力を持つ。この技術力を国内統治に利用すれば、行政効率を上げ、類のない国民監視体制を構築できる。デジタル独裁とも呼べるだろう。

     中国が経済発展すれば、民主化が進むという期待もあったが、逆行しているように見える。一方で経済発展の手段として中国型統治モデルに関心を持つ国も増えているという。

     米国が5G技術をリードする華為技術(ファーウェイ)を狙いうちするのは、中国が新たな秩序形成を主導することに危機感があるからだ。

    米国の警戒解く必要性

     グローバル化で米中経済は複雑に結びついている。米国の一部で主張されているような米中経済の分離(デカップリング)は非現実的だ。世界経済の一層の混乱にも結びつきかねない。一方で、中国が米国の警戒感を解く努力をしなければ、対立は長期化する。中国は現行秩序と共存する姿勢を明確に示すべきだ。

     香港や台湾は中国の圧力をひしひしと感じ、不信感を募らせている。北京では建国70年を祝い、大規模な軍事パレードが行われる。中国にとっては愛国的な行事でも周囲には脅威に映ることへの配慮が足りない。

     中国の参加、協力が必要な課題は少なくない。米露の中距離核戦力(INF)全廃条約の失効で宇宙を含めた新たな軍拡競争の危機が現実化している。巨大IT企業や仮想通貨(暗号資産)などデジタル経済をめぐる問題や気候変動、WTO改革もそうだ。国連安保理常任理事国である中国が率先して合意形成に努めることが信頼を高める近道だ。

     日本には、巨大な隣国である中国と共存する以外の選択はない。来春には習氏の初の国賓訪問も予定される。中国に懸念を直言し、米中対立を緩和に向かわせることが日本の重要な役割ではないか。

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