全容解明には程遠く、顧客の信頼回復に不可欠な組織のウミを出し切る覚悟も感じられなかった。
日本郵政がかんぽ生命保険の不正契約調査の中間報告を公表した。
過去5年間に顧客に不利益を与えた可能性がある約18万3000件のうち、保険業法や社内規定違反が疑われる契約は約6300件とした。
うち約1400件は虚偽の説明など法令違反に当たるという。かんぽ生命がこの間、金融庁に届け出た法令違反の10倍以上だ。
しかも、全体の約4割しか調査できておらず、違反件数は今後膨らむ可能性が高い。
調査方法にも疑問がある。契約者に電話で事情を聴く形だが、忙しくて電話に出にくい人や、耳が遠い高齢者らも少なくない。民間生保の幹部は「対面しないと、不正を洗い出せない」と指摘する。
かんぽ生命社長は「不正は一件も見逃さない」と語った。だが、調査体制を強化しなければ、年末の最終報告も不十分になりかねない。
約3000万件のかんぽ全契約調査はもっとずさんだ。保険内容も示さず、契約が意向に沿っていたかを「はい」か「いいえ」で問う内容で、はがきを返信しないと「問題なし」と見なされる。保険を販売した郵便局には「調査はアリバイづくりでは」との声も寄せられているという。
現場の混乱をよそに、経営陣は10月から保険営業を再開しようとしていた。総務省の反対などで、来年1月に延期したが、不正調査も終わらないうちに収益確保を焦る姿勢は顧客軽視と言われても仕方がない。
今回の不正では日本郵政のガバナンス(企業統治)のあり方が問われている。外部の弁護士らによる特別調査委員会の現状報告もガバナンス不全を不正の一因と指摘している。
日本郵政の長門正貢社長は「現場から情報が上がってこなかったからだ」と反論した。しかし、昨春にNHKの番組がかんぽ不正を報じた際に社内調査できたはずだ。にもかかわらず、日本郵政は問題是正に動くどころか、NHKに抗議していた。
長門氏ら経営陣は「信頼回復の道筋をつくるのが経営責任」と引責辞任を否定する。だが、不正調査にも原因究明にもトップが不誠実なままでは、郵政不信は深まるばかりだ。