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目の不自由な人の駅ホームからの転落が後を絶たない。先日も、京成押上線京成立石駅で白杖(はくじょう)を持った女性が亡くなる事故があった。
改札を通ってホームに出た直後に線路に落ちた。はい上がろうとしているところに電車が入ってきたという。ホームドアはなかった。
改札の駅員は、他の乗客への対応中で女性に気づかなかったという。誰かが声をかけていたら、と思うと無念でならない。
国土交通省によると、全国の駅で列車に接触して亡くなった視覚障害者は2010~18年度で13人に上る。視覚障害者団体のアンケートでは回答した161人の6割に転落・接触の危険を感じた経験があった。
転落防止に最も有効なホームドアは大都市圏を中心に導入されている。全国約9500駅のうち昨年度末時点で設置済みは783駅だ。国交省は1日に10万人以上が利用する駅での整備を優先しているが、そうした駅でさえ4割余りにとどまる。
理由は、設置の高コストやホームの狭さ・強度不足などにある。複数の会社が乗り入れる路線では、車両によって扉の位置が異なるという問題もある。速やかな完備は見通せないのが現状だ。
しかし、鉄道会社にとって安全は最優先である。ホーム上でも同じだ。危険なホームは視覚障害者から「欄干のない橋」と言われている。ホームドアは子供や高齢者などの危険防止にも有効な設備だ。
コストのかさむホームドアが難しくても、できることはある。JR西日本は、車両の発着に合わせてロープが上下するホーム柵を一部の駅に導入している。東急電鉄はセンサー付き固定柵をつけている。鉄道事業者はあらゆる手を尽くすべきだ。
加えて、設備の不足を補うのは、やはり人の目と声かけだろう。
駅員や乗客による「何かお手伝いしましょうか」の声かけやさりげない見守りは、転落を防ぐだけでなく、視覚障害者に安心を感じさせる。どんな誘導や声かけをすればいいのかを学ぶ場も必要だ。
東京五輪・パラリンピックが来年に迫り、共生社会への取り組みが問われている。誰もが安心して利用できる駅の実現には、社会の理解と協力が欠かせない。