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安倍首相の所信表明 これでは議論が深まらぬ

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 3カ月以上も「夏休み」をとっていた国会がようやく開会し、安倍晋三首相が所信表明演説を行った。

 参院選を乗り切り、消費税率を10%に引き上げたうえで、残る2年の自民党総裁任期で首相は何を成し遂げようとしているのか。意欲的な説明が聞けるかと期待したが、率直に言って拍子抜けだった。

 急速に進む少子高齢化への対応を「最大の挑戦」と位置づけたのは理解できる。しかし、首相の唱える「全世代型社会保障」の具体像どころか、新たに設けた検討会議の見通しすら示さなかった。国民の将来不安に応える姿勢とは言い難い。

 首相は4月以降、衆参両院予算委員会の審議に応じていない。内政・外交の幅広いテーマについて国会で説明するのは半年ぶりだ。

 この夏は集中豪雨や台風による災害が相次ぎ、危機管理や復旧・復興のあり方が問われている。

 外交では、日米貿易交渉の合意内容に対し、一方的に譲歩を強いられたのではないかとの不安が国内にある。「双方にウィンウィン」と言うだけでは納得は得られまい。

 ミサイル発射を繰り返す北朝鮮は東アジア地域の大きな脅威となっている。それに触れずに日朝首脳会談への意欲を語ったのも解せない。

 加えて、過去最悪と言われる韓国との関係が日米韓の安全保障協力に影を落としている。短行の冷淡な言及で済ませてよい問題ではない。

 国会の冒頭に首相が行う演説は、与野党に議論の素材を提供し、政府の政策に対する国民の理解を深めてもらう意味を持つ。今回の演説内容はあまりにも表層的で、これでは肝心の議論もおぼつかない。

 そもそも国会が国民への説明責任を果たす場だという認識が首相には欠けているように思える。

 首相は演説の最後で憲法に触れ、憲法審査会の議論を進めるのが「国民への責任」だと与野党に呼びかけた。懸案の説明には後ろ向きでいながら、宿願の憲法改正への協力は求めるというのではご都合主義だ。

 「安倍1強」体制のもと、国会の空洞化が指摘されて久しい。その反省から今国会では旧民進党勢力が統一会派を組んで政権と対峙(たいじ)する。与野党論戦の緊張を取り戻し、国会の復権につながることを望む。

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