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赤いダイヤ

「新小売り」の衝撃 中国、最新技術で実店舗に「革命」 収益厳しく淘汰も

上海にオープンした「盒馬ミニ」。店頭の商品はスマホで産地などを確認し、直接注文もできる=上海市内で2019年8月21日午後、赤間清広撮影

 今年7月、上海市内のオフィスビルに新しいスーパー「盒馬(フーマー)ミニ」がオープンした。580平方メートルの清潔な店内には新鮮な海産物や果物など3000近い商品が並んでいる。買い物客の女性が壁に備え付けられた自動精算機で商品を読み取ると、画面に女性の顔写真が映し出され、決済が数秒で完了した。

 同店は中国インターネット通販最大手のアリババ集団が、ネットと実店舗の利点を融合させた「ニューリテール(新小売り)」の最前線と位置づける戦略店舗だ。値札の脇に表示されたQRコードにスマートフォンをかざすと、産地からお勧めの料理法まで詳細な情報が得られる。支払いは同社の電子決済システム「アリペイ」で行い、事前に顔写真を登録すれば冒頭の女性のような顔認証での支払いも可能だ。

 新鮮な商品の数々は、米アマゾンと並ぶ世界最大規模の流通網を通じて国内外から仕入れたもの。ネット通販で蓄積した膨大なデータを用い、店周辺の客層や天気を考慮して、仕入れる商品や量、価格を毎日調整しているという。

 同社の倪(げい)暁俊・運営アドバイザーは「実店舗には商品を実際に手に取って確かめられるネット通販にはない利点がある。組み合わせることで、サービスの質を飛躍的に高められる」と言う。店内の商品はすべて自宅などからも注文でき、原則30分以内に届けてくれる。店舗はネット通販の配送拠点でもあり、倉庫の役割も担っている。

 中国ではいま、伝統的な商店が次々と閉店に追い込まれる一方、ネット通販大手が最新技術を武器に実店舗経営に乗り出し、小売り革命を着々と進めている。「新小売り」を提唱したアリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は言う。「伝統的な電子商取引(EC)は終わりを迎え、今後10~20年で新小売りの時代になるだろう」

 中国の最先端技術を追う「赤いダイヤ」第5弾では、変革期を迎えた中国の消費の現場を歩いた。

実店舗の弱点、技術で解決

 中国で最新技術に触れるのに最適な場所がある。北京に隣接する河北省で、習近平指導部がゼロから建設を進める未来都市「雄安新区」だ。9月初旬に訪ねると、大勢の観光客が小さな店の前に列を作っていた。中国インターネット通販2位、京東集団(JDドット・コム)が運営する「無人スーパー」。店内にレジはない。商品を手にした客はそのまま出口へと向かっていく。これだけで支払いが完了するという。

 仕掛けは、こうだ。客は事前に自分のスマートフォンに専用アプリを入れ、電子決済情報を登録。アプリのQRコードをかざすと入店でき、同時に店頭のカメラが顔写真を撮影する。商品を持って出口に向かうと、センサーが顔情報で個人を識別し、商品に装着されたタグの情報を読み取って代金を自動で引き落としてくれる。

 試しにアメをポケットに入れたまま店を出ると、代金はしっかり電子決済で引き落とされていた。同社はこうした無人スーパーを国内20カ所以上に展開しており、昨年はインドネシア・ジャカルタに海外1号店を出店。国内外に事業を拡大する戦略だ。

 実店舗は、商品を手に取ったり食事したりする「体験」を顧客に提供できる半面、人件費など運営コストがかさむ。24時間など長時間経営ならなおさらだ。その弱点を、ネット通販業界が倉庫管理などのために培ってきた無人化やロボット技術で補おうというのが、無人店舗の原点にある。京東物流の王振輝・最高経営責任者(CEO)は毎日新聞の取材に対し「人件費を抑えつつ実店舗の利点を生かした質の高いサービスをいかに提供するかがポイントだ。最新技術に多くの人材と開発費を投じてきた我々にはそれを解決する技術がある」と胸を張った。

 無人スーパーの展開は、今後本格化する実店舗経営の基礎データを収集する狙いもある。かなりの「冒険」といえる実験的な新型店舗も続々と誕生中だ。

 京東が昨秋、天津市内に開業した「ロボットレストラン」は、客がスマートフォンで注文すると、調理場にある5台の料理ロボットが一斉に動き出す。各地方の料理約40種類を調理可能で、できあがった料理は自律移動式の配膳ロボットに渡され、客のテーブルに届く。ロボット技術や人工知能…

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