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カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致に向け、各地の自治体が動き出している。
2020年代半ばの開業を目指している政府は9月、最大3カ所の整備地域選定に向けた基本方針案を公表した。これまでに横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県が名乗りを上げた。北海道、千葉市、東京都、名古屋市も検討を進めている。
自治体が期待するのは、訪日観光客の増加や経済効果だ。人口減少による税収減への備えの面もある。
横浜市は8月、横浜港への誘致を表明した。最大で年間の経済効果は1兆円、市の増収は1200億円との試算を示した。
25年の万博前に開業させたい大阪府・市は既に、事業者の選定に乗り出した。長崎県は佐世保市のハウステンボスを候補地に内定している。
競争が過熱する一方で、カジノが及ぼす悪影響への懸念は消えない。ギャンブル依存症が疑われる人は約320万人と推計されているが、さらに増える恐れがある。治安悪化や街のイメージ低下も心配される。
だからこそ、住民の意向を無視した立地は許されない。
横浜の場合、林文子市長は一昨年の市長選以来、誘致について「白紙」と繰り返し強調してきた。突然、誘致に転じて「(もともと)やめるとは言っていない」と強弁した。
大阪では松井一郎市長らが誘致を首長選の公約に掲げたものの、住民の関心が高かったとは言えない。
政府はIRが訪日客を呼び込む目玉になると説明してきた。しかし、カジノがなくても日本の食や自然、文化を求めて観光客は増えている。
アジアには既存のカジノがあり、日本で開業しても客の大半は日本人になるのではとの見方もある。負の側面を考えればカジノが地域振興に大きな効果を上げるとは思えない。
横浜市の誘致方針に対し、市民から反対の声が上がっているのは当然と言える。市民団体は住民投票の実施を求めている。カジノのメリットとデメリット、自治体の将来像を具体的に示した上で、賛否を問うのも一つの方法だろう。
地域の将来を左右する問題である。誘致を検討している他の自治体も含めて、正式に手を挙げる前に、住民の意向を確認すべきだ。