アカデミックカフェ

鳥の調べ方教えます!

2019年10月15日掲出

東海大学公開講座ヒューマンカフェ(道民カレッジ連携講座)から

 スズメやシジュウカラ、カラスなど、私たちの身近なところには、さまざまな鳥が暮らしています。また、高山などの限られた環境で暮らす鳥たちは、環境の変化による影響や絶滅が危惧されています。バードウォッチングの基礎知識や高山の鳥類研究の現状を学ぶことは、野鳥に対する知識を深め、観察や調査の重要性の理解につながります。

 

バードウォッチングの基礎

 世界には約1万種の鳥がいるといわれ、日本にはそのうち676種がいます(日本鳥類目録改定第7版に記載されているもの)。生物の体系的な分類法を考案したのは、スウェーデンのカール・フォン・リンネという学者で、「属名」と「種小名」をラテン語で表す二名式命名法という分類法を確立しました。これは現在も使われている基本的な分類法です。

 野鳥の観察には、フィールドノート(野帳)を使うのが一般的です。いつ(日時)、どこで(場所)、誰が(観察者)、何を(種名、数)を細かく記載しておくと、正確な記録として残すことができます。さらに、天気や風速、水辺であれば波の状態などもメモしておくといいでしょう。鳥が巣材やエサを運んでいたり、巣立ったばかりのヒナを見かけることがあれば、その様子を記録しておくと繁殖記録になります。

 鳥類の観察に便利な道具としては、双眼鏡、GPS、デジタルカメラなどがあります。街中であれば場所の特定は容易ですが、海上などで鳥を観察する場合は位置を記録する上でGPSが役立ちます。

 なぜ鳥類の個体数を調べることが大切かというと、集団(個体群)の数の増減の有無を把握したり、もし数が減っているのであれば、その要因を特定したりするための基礎データになるからです。また、どのような環境を好んで棲息しているか、その場所の特徴はどのようなものかを調べ、鳥の好む環境を維持・管理することもできます。

 鳥の観察する時期は、大きく分けて(1)繁殖期、(2)越冬期、(3)渡りの時期があります。鳥の種類や地域によってそれぞれ時期が異なりますので、環境省の「モニタリングサイト1000」というサイトに掲載されているガイドブックなどを参考にするといいでしょう。

 観察方法には(1)ルートセンサス、(2)スポットセンサスの2種類が一般的です。ルートセンサスは、時速2キロメートルで調査コースを歩き、コースの片側50メートル、両側合わせて100メートルの範囲内で見つけた鳥の種名と数、行動を記録する方法です。スポットセンサスは、1キロメートルの調査コースに5つの定点を設置し、定点から半径50メートルの範囲とそれ以遠で分けて観察する方法です。ひとつの定点に10分程度滞在し、鳴き声と目視で確認した種名と数を記録します。どの鳥の鳴き声かわからないときは、ICレコーダーなどに録音して後で調べることもできます。NPO法人が運営しているサイト「バードリサーチ」に「鳴き声図鑑」というアプリがあり、鳴き声から種類を検索することができます。

 

バードウォッチングのその先へ

 バードウォッチングを楽しむだけでなく、継続的に記録を取り続けることで、より多くの情報を得ることができます。そのためには、自分のフィールドを持って毎日観察することが重要です。いつもの散歩コースや近所の公園、自宅の庭先でもいいので、定期的に観察してみてください。「今日はヒヨドリが多いな」と気づいたら、そのままにせず、日時や場所とともにいつもよりどのぐらい多く来ているのかを記録して、それを積み重ねていきます。

 データを蓄積すると、そこから推測できることがたくさんあります。毎年この時期に来ていた鳥が今年は見かけない、あるいはその逆に今年は例年より多く来ている、といったことに気づきやすくなります。一般市民のデータも集めて共有できるようにすると、専門家の調査だけではカバーできない広い範囲の検証が可能にります。自分の観測地点だけでなく、近隣のエリアから市町村・都道府県レベルまで「面」として鳥の動態を把握することができるのです。

 観測にあたっては、「いる、いない」「多い、少ない」ではなく、具体的に「何羽ぐらい」という数を記録しておくことが重要です。パッと見ただけでは正確に数えるのは難しいと思いますが、ざっと10羽ぐらい、20羽ぐらいと捉えるようにしてください。回数を重ねると、だんだん正確に把握できるようになります。

 鳥のエサとなる植物の状況に注目しておくのも大切です。例えば、春にたくさん花をつけた樹木は、秋にたくさん実をつけるので、その実をエサとする鳥たちが数多くやってくるかもしれません。また、北海道のような寒冷地では、積雪量も鳥の棲息環境に影響を及ぼします。自宅の裏庭でもいいので、積雪量を毎日計測し、何年も記録を取り続けることで、環境と鳥の生態の関係性を解き明かすことにつながります。植物の発芽・開花・落葉などの活動周期と季節の関係を探求する学問をフェノロジーといいますが、フェノロジーに着目して記を取ることは、一歩進んだバードウォッチングになります。

 

高山帯での鳥類調査

 登山を趣味にする人も多いと思いますが、高山帯で暮らす鳥の生態には、とてもユニークなものがあります。特に貴重な存在は、ライチョウではないでしょうか。ライチョウは、日本アルプスの一部の高山帯の草原(ハイマツ林)にすむ特別天然記念物です。登山者にも人気の鳥ですが、近年は絶滅が危惧されています。数が減っている要因は、ハイマツ林の環境変化が大きいといわれています。温暖化の影響で低地の植物が高山帯へ広がり、ハイマツ林が減っているのです。さらに、キツネやサル、ハシブトガラスなど本来高山帯にはいないはずの動物が進出し、ライチョウのヒナを襲うケースも確認されています。

 ライチョウは分布が狭く、限られたエリアの中で固有の特徴を持っています。ある地域のライチョウが絶滅の危機に瀕したからといって、別の場所のライチョウを連れて来て放すことはできません。その地域のライチョウが絶滅してしまったら、二度と復活させることはできないのです。

 長野と岐阜の県境にある乗鞍岳では、信州大学の研究グループが中心となってライチョウの保護活動を行っています。夜間にヒナと親鳥をケージに隔離し、捕食者が来ないよう監視員が夜通し見守るという方法です。地道で労力のかかるやり方ですが、努力の甲斐あって多くのヒナが順調に成長しています。

 また、石川県の白山では、昭和初期に絶滅したと考えられていたライチョウが2009年に再発見されています。羽の遺伝子解析をしたところ、北アルプスなどから飛来した可能性が高いと考えられます。

 この他、ホシガラス、イワヒバリ、カヤクグリなど、さまざまな鳥の研究が行われており、最近は高地に暮らすヒバリの生態なども研究が進んでいます。

 

●本稿は2019年7月20日開催の「東海大学公開講座ヒューマンカフェ(道民カレッジ連携講座)」の講演内容を編集したものです。

〔講演者〕上田恵介氏(立教大学名誉教授)/竹中万紀子氏(東海大学生物学部元准教授/松井晋講師(東海大学生物学部生物学科)