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余録

「バグダッドの電池」という不思議な古代の出土物がある…

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 「バグダッドの電池」という不思議な古代の出土物がある。約2000年前の遺物で、高さ18センチのつぼの中に銅の筒があり、鉄棒が差し込まれていた。複製を作って酸を入れると1・5ボルトの電流が得られたという▲むろん電線が出土したわけではないが、医療や電気メッキに使ったとの説も出た。結局はパピルスを巻いて入れた容器でないかといわれるが、真相はなぞのままである。考古学と電池とはいかにも場違いだが、実はそうとも限らない▲リチウムイオン電池を開発して今年のノーベル化学賞に決まった吉野彰(よしの・あきら)さんは大学で考古学研究会に入った。志望した石油化学が最先端だったので、サークルでは「一番、古いことをしよう」と、地道な発掘調査に取り組んだという▲京都の樫(かたぎ)原廃寺(はらはいじ)の塔の土台を掘り当てたが、むろん電池は見つからなかった。だが物的証拠をもとに仮説を立て検証する研究の基本を体得し、後の研究開発に役立った。そして他大学の考古学研にいた夫人を見つけるのにも成功する▲旭化成でリチウムイオン電池の開発に取り組んだのは30代前半、電池の負極の材料探しの紆余曲折(うよきょくせつ)には胃に穴が開きそうな時もあった。見つけたのは特定の結晶構造をもつ炭素、粘り強さと楽観的姿勢が掘り当てた成果だと振り返る▲ビデオカメラ用の電池のための開発だったが、今やパソコン、スマホから電気自動車まで、まさに現代文明を支えるリチウムイオン電池となった。全世界がたたえるテクノロジーの新時代の発掘である。

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