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社説

吉野氏にノーベル賞 「モバイル革命」実らせた

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 今年のノーベル化学賞が、リチウムイオン電池を開発した吉野彰(よしのあきら)・旭化成名誉フェローに贈られることが決まった。米大学の2氏との共同受賞だ。日本の化学賞は2010年以来9年ぶりとなる。

 リチウムイオン電池は小型・軽量で出力が大きく、充電しながら繰り返し使える。スマートフォンやパソコンなどのモバイル機器に広く使われている。現代生活を支える文明の利器だ。

 吉野氏は、この電池の原形を世界で初めて作った。電池は、正負の電極にどんな物質を使うかによって性能が決まる。共同受賞者のグッドイナフ氏らが開発したコバルト酸リチウムを正極、炭素材料を負極に選び、高性能で安全な電池を作る技術を1985年に確立した。

 最初の商品化は、「パスポートサイズ」の触れ込みでソニーが発売した家庭用小型8ミリビデオカメラだ。90年代半ばにIT革命が起きると、爆発的に普及した。近年は電気自動車や太陽光発電の蓄電池などに、その用途が広がっている。

 注目すべき点は、吉野氏が民間企業の研究者であることだ。過去には、02年の化学賞を受けた田中耕一・島津製作所シニアフェローや、徳島県のメーカーで青色発光ダイオードを開発し、14年の物理学賞を受けた中村修二氏らがいる。

 企業での研究開発は、商品化というゴールを常に意識することが求められる。吉野氏は当初、ノーベル化学賞受賞者の白川英樹氏らが開発した「電気を通すプラスチック」ポリアセチレンの産業応用を検討する中で、これを電池の電極に使えないかと思いついた。

 このアイデアは不調に終わったが、代わりに電気的特性の似た炭素材料を選び、画期的な発明につなげた。基礎研究の成果が応用へと生かされた好例だろう。

 日本では、研究開発費の7割を企業が占め、総額では米中に続く3位だ。だが、エレクトロニクス分野などでは存在感を失いつつある。潤沢な資金が、独創的な研究の芽をはぐくむ環境作りに投じられているだろうか。

 今回の受賞が研究開発の現場を励まし、日本のもの作りを活気づけてくれることを期待したい。

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