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文学に陰あり

水上勉「波の暦」 美しき魂の成長と日本海 /島根

 ドラマや舞台で活躍中の女優、甲斐節子が主人公。現在32歳、心の芝居ができる大女優になるか、器用に小さくまとまってしまうかの分岐点に差しかかっている。テレビドラマのロケで出会った38歳の新進気鋭の脚本家、香西が漂わせる暗鬱さにひかれて恋に落ち、電撃結婚を果たす。

 節子は京都の丹後半島、香西は島根の隠岐(道後)と鳥取の米子で育ち、日本海の重い波音が両者を引き寄せ合ったようだ。節子は生みの母親の顔を知らずに伯母に8歳まで育てられ、やがて出奔して現在の地位へ昇ってきた。一方、香西は故郷のことを妻となった節子にもかたくなに語らない。そこへ香西の「盗作」疑惑が持ち上がり、結婚生活は序盤から不吉な影に彩られていた……。

 やはり日本海に接する福井県は若狭に生まれた水上勉(1919~2004年)が、1964年11月から翌65年10月まで「島へ」というタイトルで「週刊新潮」に連載した作品だ。66年に刊行され、文庫化の際に改題している。水上文学は社会派推理ものや仏教ものなどの系統に分けられるが、前者の代表作は「飢餓海峡」(63年)だろう。

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