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「表現の不自由展」再開 それでもなお課題は残る

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 国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」が66日ぶりに再開した。

 物議を醸す展示内容にテロまがいの脅しや激しい抗議が殺到し、開幕からわずか3日で中止に追い込まれる異例の事態となっていた。

 観客や関係者の安全を考慮して、やむを得ず取った措置だった。このままだと、脅すことで気に入らない催しを中止させることができるというあしき前例を残しかねなかった。

 暴力に屈しないという姿勢を示した点は評価できる。

 主催者も作家も、安全対策や鑑賞方法でぎりぎりの妥協点を探ったという。その一方で、多くの課題を残した再開となった。

 鑑賞はツアー形式で、入場者は抽選となった。初日の鑑賞者枠は60人だけだった。2日目以降、定員は増えたが、撮影写真のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)への投稿禁止を約束する同意書の提出も求められた。

 企画展は、不特定多数の人に直接作品を見て、自由に感じてもらうのが本旨だったはずだ。

 場内の混乱やネット上の「炎上」を懸念しての措置だろうが、厳しい制限は自然ではない。方法は今後、検証する必要があるだろう。

 「手続き上の不備」を理由に補助金を全額不交付にした文化庁の決定も依然、問題として残る。

 萩生田光一文部科学相は再開当日、文化庁の決定は変わらないとの認識を改めて示した。

 しかし、不交付の審査に、採択にあたった外部審査員はかかわっていないという。議事録も残されておらず、決定過程は不透明だ。

 主催者である愛知県は不交付決定の取り消しを求め提訴する構えだ。国は根拠を含め審査経緯を丁寧に説明すべきだ。

 有識者らからも、実質的な検閲にあたるとの懸念を呼び起こすなどと批判の声が広がっている。助成制度が恣意(しい)的に運用されれば、芸術文化活動が萎縮する。

 今回の企画展で抗議の対象になったのは、元従軍慰安婦を象徴する少女像や、昭和天皇の肖像を素材とした作品だ。政治性の高い作品を公共の空間でどう見せるか。これを機に議論を深めたい。

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