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松原隆一郎・評 『MMT 現代貨幣理論入門』=L・ランダルレイ著、島倉原・監訳、鈴木正徳・訳

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 (東洋経済新報社・3740円)

「租税が貨幣を動かす」という主張

 このところ経済学関係ではもっとも話題になった、というか毀誉褒貶(きよほうへん)にさらされた理論、MMT(Modern Money Theory)。その概要を入門的にまとめた2012年初版の改訂版が出版された。

 MMTは「財政は赤字が常態であって均衡を目標にする必要はない、失業が蔓延(まんえん)しているならどんどん財政支出すべき」と唱える。税収を財政支出の上限とすべしという考えは捨てよ、というわけだ。感想を尋ねられた黒田東彦日銀総裁は「必ず高インフレをもたらす」とこき下ろし、麻生太郎財務相は「知らないわけではないが、理論というべきかどうかも分からない」と不快感を露(あら)わにした。両者の発言からは、腹立たしくも無視できない気配が伝わってくる。

 財政支出を拡張する「大きな政府」論は、一方では公共事業で景気を浮揚させようとする道路族の政治家やゼネコン、他方では政府支出を拡大して弱者や貧困層の救済に回せという左派から支持されてきた。けれども前者は1990年代に景気浮揚の効果をもたらさなかったと小泉構造改革で総括され、後者は財政赤字の累積で無理と一蹴されてきた。ところが「小さな政府」論にもグローバル金融危機や格差といった弱点が目立つようになり…

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