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「早く避難を」水に囲まれ孤立した施設から高齢者救出

冠水で孤立した老人ホームから救助ボートで助け出された入所者(中央)=埼玉県川越市下小坂で2019年10月13日午後0時半、仲村隆撮影

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 「早く避難させたい」。12日夜から13日未明にかけて日本列島を通過した台風19号。川の堤防の決壊や氾濫で、高齢者を抱える施設が水に囲まれて孤立した。施設関係者は懸命の救出作業を繰り広げ、高齢者は「まさか自分が水害に遭うとは」と驚いた表情で語った。

「どんどん水かさが増えた」「まさか自分が救助されるなんて」

 13日午前1時半ごろ、「ゴポゴポ」という水の音がした。約120人が入所する埼玉県川越市下小坂地区の特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」。介護士の正木一也さん(45)は1階が浸水し始めていることに気付いた。

 同市平塚新田では荒川の支流、越辺(おっぺ)川の堤防が約50メートルにわたって決壊し、濁流が田んぼや平地を襲った。水深は場所によって2メートル近くになり、ホームなどが一時孤立した。地元消防は13日、救命ボートで入所する高齢者らの救助を続けた。

 ホームでは13日未明、風雨が強くなるのに合わせて入所者らを別棟の2階に移動させた。正木さんは「どんどん水かさが増えた。1階の階段部分が水面の下に沈み、2階に迫ってきた」と振り返った。その後、停電が発生した。

 利用者らは、もともと隣接する平屋の施設にいたが、この施設は屋根近くまで水面につかった。30代の男性職員によると、別棟の2階では、ベッドが足りない分は床にマットレスを敷いたという。

 13日の救助作業では、4そうのボートを使って老人ホームの近くの道路まで入所者らをピストン輸送し、夕方までに運び終えた。体調を崩した人はいないという。

 渡辺圭司施設長は、早期に避難所などへ避難しなかった理由について「入所しているお年寄りは重度の病気や認知症を患っている方が多く、無用のストレスをかけたくなかった」と話す。その代わり、夜勤の職員を通常の5人から24人に増やして対応していたという。

 入所していた青木繁雄さん(83)は「こんな体験は初めて、知り合いで水害に遭った人もいるが、まさか自分が救助されるなんて」と驚いた表情だった。父親(89)が入所している無職女性(67)はホームに電話したがつながらず、避難所で父親と再会した。父親は「怖かった」と話したという。「けが人はいないと聞いていたが、顔を見るまでどんな状態か分からない。ほっとした」と話した。【仲村隆、中川友希】

「入所者、想定外の水の多さに不安な様子も」

 阿武隈川が氾濫し、支流の安達太良川の堤防も決壊した福島県本宮市では、同川沿いの「谷病院」と隣接する介護老人保健施設「明生苑」で、患者や職員ら計約200人が取り残された。5階建ての病院と4階建て施設はそれぞれ1階が浸水。13日午後2時ごろには、水や発電機用の軽油が自衛隊のボートで明生苑に運び込まれた。施設に残された職員らが窓越しに、安達太良川の堤防上で待機する関係者に大声で様子を伝えるなどしていた。

 関係者によると、施設の入所者は2、3階にいて、テレビを見るなどして過ごしている。体調を崩している人はいないという。

 施設によると13日午前2時ごろに急に水かさが増し、1階が浸水した。重篤な患者は既に他の病院に転院させたという。渡辺雅俊事務長は「入所者らは比較的落ち着いているが、想定外の水の多さに不安な様子も見せている。施設内は自家発電で何とかやっているが、やっぱり不自由だ。早く救助されるようにしてあげたい」と話した。

 長野市下駒沢にある肢体不自由の障害者らの施設「長野県立総合リハビリテーションセンター」(3階建て)は12日夜に停電し、非常電源で対応していたが13日午前8時には非常電源も切れた。さらに13日早朝に千曲川の堤防決壊で濁流が押し寄せ、1階部分が浸水し、午前9時時点で患者や入所者約60人が取り残された。

 センターによると、12日午後7時ごろから浸水被害を警戒し、患者と入所者を1階から2、3階へ避難させたが、浸水後は全員を3階へ移動させた。

 非常電源が切れた後、施設側は救急車を要請した。職員らが外階段を使って患者と入所者を一人一人下ろし、ひざ丈まで浸水した敷地内をストレッチャーに乗せて運び出した。救急車は冠水していない施設前の道路に待機し、そこから患者や入所者は近隣の病院などへ搬送された。

 施設は13日夜になっても停電が続いた。施設関係者は「なんとか13日中に全員を無事に避難させたい」と疲れた表情で語った。【寺町六花、湯浅聖一、原奈摘】

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